寡婦が「捨てられる」町:聖地ヴリンダーヴァン

寡婦が「捨てられる」町:聖地ヴリンダーヴァン

ヴリンダーヴァン(Vrindavan)という町をご存知でしょうか。この町は、日本人にあまり馴染みがない町かもしれませんが、3大神の1つ、ヴィシュヌにまつわる聖地として知られています。

そして、この町は、寡婦(かふ)が「捨てられる」町としても知られているんです。どうして、寡婦は捨てられるのでしょうか。今回は、このヴリンダーヴァンと寡婦が、「捨てられる」要因について、紹介します。

1.ヴリンダーヴァンってどんな町?

ヴリンダーヴァンは、インド北部ウッタル・プラデーシュ州西の端にある、ヒンドゥー教の聖地です。

この地は、ヒンドゥー3大神のヴィシュヌにまつわる聖地の中でも、最も神性とされる場所の1つです。

首都デリーの南、約130㎞にある国道130号線に沿い、ヤムナー川の右岸に位置します。

人口は2011年、最新の国勢調査によると、6.3万人となっています。

なお、南に隣接するマトゥラーも、ヴィシュヌ神の聖地として知られています。

ヴィシュヌには、アヴァターラと呼ばれる化身がいるとされ、世界が危機に陥ると、化身としてヴィシュヌが現れ、世界を危機から救うとの信仰があります。

一般的に、10化身が、ヴィシュヌのアヴァターラとして挙げられており、

  1. マツヤ(魚)
  2. クールマ(亀)
  3. ヴァラーハ(猪)
  4. ナラシンハ(人獅子)
  5. ヴァーマナ(矮人)
  6. パラシュラーマ(斧をもったラーマ)
  7. ラーマ(ヒンドゥー2大叙事詩『ラーマーヤナ』の主人公の王子)
  8. クリシュナ(英雄神、2大叙事詩『マハーバーラタ』などに登場)
  9. 仏陀(ヒンドゥー聖典『マヌ法典』に、不道徳な輩が集まることへの防波堤として、仏教を作る)
  10. カルキ(ヒンドゥーの終末観、世界の終わりに現れる神)

が化身として知られ、信仰の対象となっています。

ヴリンダーヴァンで信仰されているのは、8番目の化身であるクリシュナで、この地にはクリシュナが現れ、数々の徳が施されたとの神話があり、多くの信者が礼拝に訪れています。

町には、大小さまざまな寺院が多数あり、正確な数が把握できないほどだといいます。

こうした寺院群の中で、最大のものは、ゴーヴィンド・デーオ(Govind Deo)寺院で、ヴリンダーヴァン駅から、1㎞ほどの距離にあります。

この寺院は、1590年に、ムガル帝国アクバル帝の時代に建立された、歴史のある7階建ての寺院で、クリシュナを祀るためのものです。

現在は、7階建ての部分は破壊されたため、3階建ての部分のみが残っています。

この寺院は、西洋・ヒンドゥー・イスラムの建築様式の影響がみられ、芸術的価値も認められています。

壁で囲われているニクンジャ・バン(Nikunjo Bond)と呼ばれる園は、クリシュナ神が民衆の前に姿を現し、徳を説いた場所として、信仰の場所となっています。

2.寡婦が捨てられる町

ヴリダーヴァンは、聖地という顔とともに、寡婦が捨てられる町という顔ももちます。

文字通り、家族にここに連れてこられ「捨てられる」寡婦もいれば、寡婦自ら、この町にやってくるケースもあるといい、現在、2万人以上の身寄りのない寡婦が、この町で暮らしています。

なぜ、寡婦が「捨てられる」という事態が起こるのでしょうか。

寡婦は、インドの文化で不吉な存在とされます。

夫が死んでも、夫との婚姻関係は継続すると考えられるため、寡婦の再婚は許されません。

寡婦は、日陰者として差別を受け、納屋など部屋の片隅に追いやられ、化粧をすることも文化的に許されません。

こうしたことは、地方の農村部ほど、強いといいます。

寡婦を日陰に置くべきということは、ヒンドゥー聖典によく記述されており、化粧をすることは男性をたぶらかすことになるなど、差別的な文言が、多数残っています。

法では禁止されていますが、寡婦が夫の遺体とともに、生きたまま焼き殺されるサティー(sati)という慣習もあるほどです。

現在も、稀に、サティーを行われた女性がニュースになりますが、周囲の親族たちは、死んだ女性を称えることがほとんどです。

なぜ、ヴリダーヴァンに、寡婦が「捨てられる」ことになったのでしょうか。

それは、16世紀頃、当時の社会改革者チャイタニヤ・マハープラブフ(Chaitanya Mahaprabhu)が、家庭やコミュニティで、虐げられる寡婦を助けるために、この地に呼び寄せたのがきっかけだったといいます。

寡婦が虐げられる伝統は続いたため、ある寡婦は捨てられ、ある寡婦は自身を虐げる家から逃げるために、この地に集まりました。

そして、この伝統はこの地に、定着しています。

現在は、「捨てられた」寡婦を支援するNGOなどもでき、安心して「捨てる」人が、増えているともいわれます。

寡婦を家に置いておくのは不安だから、ヴリダーヴァンに連れて行こう、あそこなら支援もあるし、ということなのかもしれません。酷いです。

3.寡婦が「捨てられる」町:ヴリダーヴァン

寡婦が虐げられるという話はよく聞きますが、まさかその先に、「捨てられる」ということがあるとは驚きです。親族内の寡婦(娘や母親や姪など)を「捨てる」ということですが、無料の施設や老人ホームにでも入れる感覚なのでしょうか。理解できません。

寡婦関連の酷い話は、インドにはたくさんあるので、また機会があれば紹介したいと思います。

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