インドの不可触民と人権侵害

インドの不可触民と人権侵害

不可触民と呼ばれる人々への人権侵害は、全インドで行われています。

不可触民に関するニュースの見出しを見れば、かれらの置かれている悲惨な状況を見て取れます。

「花を摘んでいた不可触民の少年が、殴り殺される」

不可触民男性が警官によって、3日間にわたり拷問を受ける」

不可触民をリンチするため、警察が暴徒をそそのかした」

「魔女として、不可触民の女性が裸で歩かされた」

などなど。数え上げればきりがありません。

今回は現在も行われている不可触民への差別を見ていこうと思います。

1.現在も行われている不可触民への差別的慣習

不可触民は、インド文化の中で最低と考えられる仕事に追いやられ、公の場で侮辱を受け続けています。

慣習としての差別をいくつか挙げてみます。

など、いくらでも挙げられます。

社会的に抑圧された存在である不可触民、次の項では不可触民が犯罪に巻き込まれたときの話を紹介します。

2.不可触民に対する犯罪と警察

インドの国家犯罪記録局によると、不可触民に対する犯罪は1時間に2人が被害に遭っているとされます。

毎日3人の不可触民女性がレイプされ、2人の不可触民が殺され、2軒の不可触民の家が焼かれているとのことです。

一見驚きの数ですが、実際にはもっと多くの被害者が毎日生まれているといいます。

インドの地方では、カースト社会が強く残っており、カーストコミュニティの反発を恐れた現地の警察は見てみぬふりをする、ということがしばしば起きてしまう、と海外のNGO団体によってしばしば報告されています。警察は、有力なカーストコミュニティと結託して、不可触民へ行われた犯罪行為を揉み消している地域があるというのです。

こうした警察の動きへの不可触民からの抗議は膨大に寄せられていますが、その多くは却下されているといいます。

次の項では、多数の報告が上がる、不可触民女性への悪質な犯罪行為を見てみます。

3.多発する不可触民女性に対する犯罪

不可触民の女性は、その男性よりも、犯罪の被害に遭うことが多いといわれています。上位カーストの構成員に気に入らない行為をとったと見なされると、暴行やレイプなどをされる事件が多く起きています。前述したように、警察とカーストコミュニティの結びつきののため、逮捕すらされない事件も多々あるということです。

貧困なエリアが多いビハール州で起きた1999年の事件は、あまりにも悲惨なものでした。不可触民の一家、夫と妻、2人の子供が8日間監禁され、その間、妻は拷問とレイプを繰り返され、最終的に焼き殺されました。警察はこのことを知っていましたが、注意すらしなかったといいます。被害者が助けを求めることができる場所は、存在しなかったのです。

2001年のアムネスティによるレポートでは、不可触民女性に対し、非常に多くのレイプ事件が起きているとの報告があります。この加害者は、地主、富裕層、警察官などが多く、頻繁に起きているとのことです。被害の告発を女性がしても、その30%が虚偽として却下されていたと指摘しています。

さらにこのレポートでは、警察が日常的に賄賂で動き、目撃者を脅し、証拠の隠滅を行っているのだとしています。

神の僕(デーヴァダーシー)」として売春を強制される例も多々あり、富裕層、上位カーストの相手をさせられるケースもあります。子供の誘拐もたびたび起き、こうした売春施設へ売られることもあるといいます。

次の項では不可触民の地位向上の難しさを見てみます。

4.なぜ地位向上が難しいのか

不可触民への差別的犯罪は、都市部に比べ、地方の方が多くなっています。その理由は、都市部に比べ地方の農村部などは、古来から続くカーストコミュニティの影響力が強く残っているため、不可触民の人権が顧みられないことがあるためです。

都市部では緩くなってきているカーストコミュニティの影響力ですが、インドの人口比でいえば約8割が都市部の外で暮らしており、それだけの不可触民がより酷い差別に晒されているという事になります。

ヒンドゥー教徒は「浄性」に基づき、それぞれのカーストに生まれると文化的に考えられています。大まかにいうとバラモンは聖職者や教師、クシャトリヤは統治者、ヴァイシャは商人、シュードラは労働者です。こうした大枠の中に、それぞれの職業に当たるサブカーストが数千あります。400-500のサブカーストがあり、アウトカーストとの呼称もあるように、不可触民カーストの枠外に存在する、枠内に入ることができない「不浄」の存在として位置付けられています。

生まれながらに「不浄」の存在として見なされ、汚れた仕事を僅かな賃金でせざるを得ない状況にあります。

多くの不可触民が、ヒンドゥー教徒に文化的に嫌われる、トイレや下水道などの掃除を手作業でさせられ、死んだ動物の処理などもします。こうした仕事はインド人にとって「不浄」の象徴として見られがちで、目を向けるのも嫌がる人がいます。不可触民ゆえに「不浄」な仕事に従事せざるを得ず、また「不浄」な仕事をしているゆえに、ますますの差別を受けるという負のスパイラルから抜け出すことは難しいのです。

また、極度の貧困や低い識字率、ヒンドゥ―文化からの圧迫によって、ことごとくそのチャンスは潰されているといえます。

次の項では、こうした状況の中行われている不可触民の抵抗と地位向上のための実践について見てみます。

5.抵抗と地位向上

不可触民が関わる抵抗運動としては、極左過激派のナクサライトと総称されるグループが挙げられます。この団体は様々ありますが、貧困層の利益擁護、不可触民への暴力を打ち破ることを掲げることがあり、多くの不可触民が参加しています。

このナクサライトが起こしたテロで有名なものは、2010年5月、コルカタ発ムンバイ行きの特急電車の脱線事故を起こし、計148人の使者を出した事件があります。ナクサライトの中の組織で、政府と和平案を結んだ組織もあるように、テロ行為は許されませんが、過激な抗議活動が実を結んだ例もあるようです。

また、不可触民の地位向上を行うための支援団体もあります。デリーをはじめ、大都市部を中心に展開されているため、広いインドの隅々までケアすることは難しいですが、教育をはじめ、医療など様々な支援が行われています。インターネットで検索すると、多くの支援のNGOがあることも確認できます。

こうしたNGOの多くは、不可触民の地位向上やチャンスをつくるために、教育に力を入れているものが多いです。支援している学校などでは、給食や教科書などを無料で提供し、多くの子供が通うことができています。しかし、現在インドでは禁止されている児童労働を強制する親も依然としており、親の教育も必要になっています。

学業が著しく優秀な生徒はNGOなどから奨学金も与えられ、研究職に付く不可触民も増えてきています。しかし、インドの一般企業に務めると、不可触民のために出世が厳しくなるケースも多々あります。

そのため、インドの強みであるIT分野に代表されるように、不可触民のエキスパートはアメリカなどに渡り、活躍の場を広げる機会を得る人が急増しています。

6.現在インドの不可触民と人権侵害

見てきたように、現在インドでは不可触民差別が数多く残っており、殺人やレイプといった凶悪犯罪の被害に遭う人も多くいます。

憲法上は差別が否定され、その地位向上のため、各分野に不可触民のためにという特権が与えられています。

しかし、圧倒的多数はヒンドゥー教徒であり、カーストの枠組みの中で生活をしています。マイノリティの不可触民問題は、インド文化に深く関わることなので、なかなか本質的な改善は難しいようです。

ただ、都市部ではカースト枠内の貴賎が緩くなってきているのも事実です。そうした、文化の移ろいが、不可触民の地位向上に早く繋がって欲しいと切に願います。

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