南アジアの重箱弁当

南アジアの重箱弁当

日本の重箱の伝統

日本には重箱と言う食器があります。高級なものになると漆塗りの金蒔絵、螺鈿をちりばめと立派な工芸品ですが、現在でもお正月には、おせち料理を彩りよく詰め合わせるものとして、無くてはなりません。

元旦の朝家族そろって重箱の蓋を開けると、きれいに詰められた海老や玉子焼き・飾りかまぼこなどが眼に入り、嬉しいものです。重箱は3段・5段と上に積み重ねていくので、「喜び事が積み重なる」縁起担ぎの面もあります。

食品を詰めた器を積み重ねる形式は持ち運びに便利なので、お花見などで活躍しますが、江戸時代には特にこの形式が発達しました。芝居見物に物見遊山にと、重箱と徳利や盃・小皿をコンパクトに組み合わせたものが開発され、裕福な商人や高級武士が見せつけるように豪華な品を携えました。

日本だけじゃなかった重箱型食器

この食器を積み重ねて持ち運びする方法、日本だけかと思うとそうでもなく、インドやパキスタンを始めとする南アジア、中国・朝鮮にもありました。現在中国では「丸形で多人数用の重箱弁当ならあるが、一人用でそのようなタイプは無い」そうです。

日本でも現在では晴れの日用の食器となっていますが、これを日常使いの器にしている国々があります。現在一人用重箱型食器が日常生活で活躍している国、これはもう圧倒的に南アジアです。彼らは通勤・通学に、3段重ね・5段重ねの丸型ステンレス製の弁当箱をぶら下げていきます。

テレビの「インドの庶民生活紹介」的な番組で見かけますが、自転車や荷車に大量のインド重箱弁当を積み込んで配達する人々、彼らは「ダッバーワーラー」と呼ばれますが、自分で弁当を持って行かない人のために彼らが活躍するのです。インドに弁当愛用者が多いのは、文化・宗教によりタブーとなる食べ物が違うので、外食産業が発達しにくいためです。

IT大国としても知られるインドですが、最近までそのようなITのシステムは「ワーラー(ダッバーワーラー)」のところまでは降りて来ていませんでした。毎日20万食の重箱弁当が、伝統的なシステムと人手で朝各家庭から集められ、食後空き容器がまた家庭へ戻されます。しかもほとんど間違いありません。

シバ神も召し上がったティフィン

この丸型重箱弁当箱を、現在のインドでは「ランチ・ボックス」と英語で呼ぶ人が多いですが、本来は「ティフィン・カイリヤル」と言う名前です。通称を「ティフィン」と言い、「ティフィン」とは「昼飯」の意味です。インド古代詩の中に、「かくしてクリシュナ神は、ティフィンを摂りに来たりし」などの節がありますから、歴史のある言葉なのでしょう。この言葉は東インド会社を通じてイギリス本国にも伝わり、オックスフォード英語辞書や一般辞書にも「tiffin=インドの昼食」と載っています。

さてそのお弁当箱の中身はと言うと、以下はラージャスターン州の1人のサラリーマンの5段重ね弁当の中身です。

最上段にはサラサラの薄味のダール(豆汁)、次はパサパサした中辛のジャガイモとヘチマのスパイス煮、3段目は汁気の無い中辛のオクラのスパイス炒め、次の段にはヨーグルトをたっぷり詰め込み、最後は薄焼きパンのチャパティか揚げパンのブーリーが数枚。

ジャガイモとヘチマの煮物は、日替わりで里芋のスパイス煮や人参の甘煮に変わります。時には玄米の炊き込みご飯が詰められと、一般日本人が思うインド料理とは少し距離のあるものが入っています。

日本人がお土産に購入?

この弁当箱の素材は銅からアルマイトになり、1970年後半からは、ほぼステンレス製のものに変わりました。

インドでティフィンを扱っている金物屋の親父さんによると、「日本人は良く買っていくね。アメリカやヨーロッパの白人はほとんど買わないけれど」だそうです。彼に言わせると「日本人の好みは5段重ねより3段重ねだね。日本人は金持ちなのに、食い物が質素なのは意外だったよ」。

値段は3段重ねで100ルピーから150ルピー、その場で電気ルーターで名入れすると、「日本人はとても喜んでもう一つ買ってくれる」そうです。

どうやら親父さんは、日本人はおかずの種類を節約していると思っているようですが、これはどうでしょう。これをお弁当箱として使う日本人は、ほとんど居ないと思われるのですが。

BENTO」はすでに世界語となるなど、世界に冠たる弁当大国の日本、通勤・通学カバンに入れやすいお弁当箱は、国内に便利なものがいくらでもありますからね。おそらく安価でその土地独特の形状をした容器、小物入れとしてお土産にぴったりと思って買っていかれるのでしょう。

勘違いは日本人側にもあります。日本人は名入れをサービスと思っていますが、これは他の家の弁当箱と、決して入れ替わったりしないようになのです。そこは各種のタブーに触れる恐れがありますので。

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