マラバール海岸と奇習・テイヤム

マラバール海岸と奇習・テイヤム

マラバール海岸をご存知でしょうか。インド西海岸にある海岸で、独特の奇習といわれる、テイヤム(Theyyam)がある地域なんです。テイヤムは、派手な化粧とエスニカルな衣装を身にまとい、特徴的な舞踊を繰り広げる、大変興味深い慣習です。

今回は、マラバール海岸と、奇習テイヤムについて紹介します。

1.マラバール海岸

マラバール海岸は、一般的に、カルナータカ州のゴア以南から、ケーララ州にまたがる海岸、約950㎞をさします。

また歴史的に、マラバール海岸は、広義ではインドの西海岸全域、狭義にはケーララ州の海岸のみをさしてきたことも、わかっています。

カルナータカ州の港湾都市マンガロール(Mangalore)以北の海岸地帯は、西ガーツ山脈(West Ghats Mountais)とアラビア海に挟まれた、細長い海岸とともに、砂丘やラグーン浜堤(ひんてい)が続き、その背後には、丘陵(きゅうりょう)や段丘(だんきゅう)があります。

マンガルール以南は、特徴のない海岸線が続くため、独特の地形を楽しめる以北に、観光客が集まっています。

マラバール海岸は、歴史的に、地理的位置を利用し、アラビアや東南アジアとの交易を行ってきました。代表的な港湾都市として、コーチン(Cochin:現コチ)、カリカット(Calicut:現コーリコード)、パンジム(Panjim:現パナジ)があります。

大航海時代以降、西欧との交易も活発となり、ニールギリ丘陵カルダモン丘陵で生産された、香辛料やコーヒー、茶を、輸出していました。

このように、外来文化との交易が、伝統的に行われてきたため、特に中世以降は、キリスト教の影響を強く受けており、キリスト教徒の割合や識字率が高い地域となっています。

識字率が高い理由は、キリスト教の宣教師が、教会で文盲の人々に、字の読み書きを教えることで、布教を行っていたためです。

住民はドラヴィダ系(インド先住民族、北部に多いアーリヤ系に比べ肌が黒い)が多く、ケーララ州ではマラヤーラム語、カルナータカ州ではカンナダ語が用いられています。

2.テイヤム

このマラバール海岸の地域には、インドでも珍しい慣習、伝統儀礼といわれているテイヤムがあります。

この慣習は、この地域独自のもので、数千年前の古代から、守られ続けてきたものだといわれています。

テイヤムにまつわる寺院は、この地域に約400あり、伝統を支えてきました。

テイヤムは、ヒンドゥー教が広まる以前から行われてきたもので、ヒンドゥー教の影響がいきわたった今でも、原始宗教の側面をみることができ、古代の慣習を考えるうえでも、大変興味深いものだといわれています。

2-1.地母神バガヴァティ女神

このテイヤムの慣習をもつ、地域特有の地母神として、バガヴァティ(Bagawathi)という女神がいます。この地母神は、戦いの神として信仰されており、他の地域の地母神信仰と同様、神に祈りを捧げ、儀礼を行い、神を満足させることで、地域の豊穣・安寧を願います。

当然、バガヴァティへの信仰が疎かとなり、彼女を満足させることができなければ、怒り、飢饉や疫病などを発生させ、人々に罰を与える、と信じられています。

バガヴァティに対して捧げられる一連の儀礼が、テイヤムです(バガヴァティ以外にも、様々な神々に祈りを捧げる儀礼は行われますが、テイヤムは、バガヴァティへの祈りを中心に行われていきます)。

また、バガヴァティの神話は、ヒンドゥーの中にも登場しており、クリシュナとの繋がりが描かれています。これは、ヒンドゥーが、バガヴァティ信仰を融合していく過程で、作られた神話であると考えられています。

2-2.テイヤムの慣習を実行する不可触民

ヒンドゥー教の儀礼は、バラモンが独占的に儀礼を行いますが、テイヤムは、不可触民が儀礼を行うことでも知られています。

一般的に、現在の不可触民ドラヴィダ系先住民といわれ、インド北からアーリヤ人が侵入・征服して来たたことにより、被支配者の身分になり、隷属関係を築かれました。そのため、一般社会・生活において、差別的な扱いを受けることになります。

しかし、先住民である不可触民は、伝統的に、土着の信仰を守ってきたため、アーリヤ人の支配下にあっても、かれらが引き続き、儀礼を執り行うこととなったのです。こうしたことは、インド各地でみられ、アーリヤ人の文化的な柔軟性ともいえます。こうした土着の信仰を、アーリヤ人の文化(ヒンドゥー文化)の中に融合することで、支配をスムースに行ったのです。

また、テイヤムの儀礼を行うのは、上位カーストの寺院などが多く、儀礼を行う時だけ、不可触民が寺院の敷地に入ることが許されます。

2-3.テイヤムのパフォーマンス

テイヤムは、その独特な舞踊儀式が知られています。この慣習は、テイヤム独特の化粧(数時間かける)から人々に公開され、男性がパフォーマーとなります。これは、神の依り代となる過程であり、重要な儀式の1つという考えです。

化粧を終え、仮面等を身にまとった不可触民が、パフォーマンスを行いますが、舞台等の設置はされず、観客も立ちながら、また座りながら観る人がいるなど、形式はありません

このパフォーマンスは、いくつかのフェーズに分かれており、大まかに分けると、神がパフォーフォーに憑依していない時の儀礼と、神がパフォーマーに憑依した時の儀礼があります。

  • 前者は、神が憑依をするための準備・環境を作るため、そして憑依後に、神に感謝を伝えるための儀礼です。
  • 後者は、神がパフォーマーの身体を借りて、舞踊を演じるもので、人々が神にささげた儀礼への返答という意味合いをもちます。

後者の、神の憑依の際には、特定の化粧や衣装がまとわれ、観客にも、わかりやすい演じ方になっているといいます。

3.マラバール海岸と奇習・テイヤムのまとめ

マラバール海岸北部の地域は、特徴的な地形があり、それがテイヤムのような独特な慣習を生み出したのでしょうか。迫力のある化粧と衣装で行われる舞踊は、一度、生で見てみたいものです。

インドには各地に、独特な地形や慣習が、まだまだあります。また機会があれば紹介させていただきます。

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