インド最大級のムスリム団体:タブリーグ・ジャマート

インド最大級のムスリム団体:タブリーグ・ジャマート

タブリーグ・ジャマート(Tablighi Jamaat)という、ムスリムの団体をご存知でしょうか。最近、インドのニュースで話題になったので、ご存知の方も多いかもしれません。新型コロナウィルス拡散の元凶(?)と批判された集会を、開いた団体です。

今回は、最近話題となったこの団体が、どういった団体なのかを紹介します。

1.タブリーグ・ジャマートってどんな団体?

タブリーグ・ジャマートは、南アジアを中心に、世界中に信者を抱えるムスリムの団体です。正確な信者の数は、団体として管理していないため、推定で8000万から1億人(2億を超えているとの話もある)といわれています。本部は、デリー・ニザームッディーン地区のマーカズ(Markaz)にあります。

タブリーグ・ジャマートの活動は、20世紀のイスラム運動の中で、最も影響力をもった運動の一つと評価されています。1926年に始まったタブリーグ・ジャマートは、ムスリムの道徳的価値や宗教的規律の低下などへの危機感から、草の根による宗教改革を目的としました。

タブリーグ・ジャマートは、イスラムの教えを実践するために「6つの原理(信仰の宣言、祈り、知識、イスラム教徒の尊重、誠意、宣教活動)」を重要視しています。また、政治や法学への専心を否定し、『コーラン』や『ハディース(ムハンマドの言行録)』に依拠します。

9.11以降、テロへの繋がりの疑いをもたれ、アメリカのタブリーグ・ジャマートへの厳しい調査が入りましたが、テロとの繋がりは否定されました。タブリーグ・ジャマートは、政治活動や政治討論をせず、宗教にのみ焦点を当てた活動を続けているということです。

タブリーグ・ジャマートは、社会的・政治的地位・立場はとは無縁の活動を続けてきており、多くのムスリムの信仰の助けとなり、信者を増やしてきました。

2.タブリーグ・ジャマートの展開

タブリーグ・ジャマートは、当初、デオバンド運動(18世紀中葉以降、南アジアのスンニ派の間で流行った宗教改革運動)の、個々人の宗教改革の教化に注目した動きとして、1925年にスタートしました。

創始者はムハンマド・イリヤース(Muhammad Ilyas)、イスラムの宗教学者です。イリヤースは、デリー近郊のニザームッディーン地区に移り住み、この運動を始めました。彼は、運動の展開にあたり、イスラムの始祖ムハンマドが採用した宗教的実践・生活様式を取り入れることで、イスラム社会の刷新を図ろうとします。

この運動の支持者は、1925年の運動開始からすぐに増えていき、1941年の年次大会では、約2.5万人が参加をしたといいます。これは、当時のインド社会が、自己の宗教アイデンティティを求める傾向にあったことも、影響していたといいます。

ヒンドゥー同様、当時のイスラム教の信仰は世俗化し、黎明期の純粋な信仰が失われ、堕落したと、多くのムスリムは考えました。そうした窮状から脱するために、純粋な信仰を取り戻し、かつてあった豊かなイスラムの文化を取り戻そうということです。そうした復古主義的傾向をもつこの団体の性格が、多くの人々に受け入れられたようです。

インド独立後、タブリーグ・ジャマートは、海外にも信者を増やしていきます。政治的な動きを嫌う性格のこの団体は、海外でも比較的受け入れやすかったといいます。

現在の信者の多くは、インドをはじめとした南アジアに住んでいますが、フランスの10万人をはじめ、欧米各国で数万人規模の信者がいるといいます。

3.宗教理念と目的

タブリーグ・ジャマートのメンバーは、イスラム教スンニ派から逸脱しない限り、独自のイスラム法学の実践をすることができます。タブリーグ・ジャマートは、ダーワ(Dawah)と呼ばれるイスラム教の布教や、説教の概念に基づき、善行を奨励し、悪行を禁じます。

この解釈は『コーラン』と『ハディース』をもとに行っています。タブリーグ・ジャマートは、イスラムの聖典に立ち返り、学び続けることの重要性を説いているのです。それには、政治や経済など、世俗的なものと切り離すことが必要ということです。

タブリーグ・ジャマートは、例え宗教的知識が足りていなくても、布教活動を行うことを推奨します。従来のイスラムの教えでは、宣教師は最高レベルの、イスラムに対する学識と倫理が、布教者の前提条件とされてきました。タブリーグ・ジャマートはそれに反対し、自己を見直すため、自己改革するための手段として、布教活動を推奨しているといるということです。

タブリーグ・ジャマートは、現在のイスラムの暮らす社会が、俗に浸っていると考えており、始祖ムハンマドが模範として示した生活様式を取り戻す必要がある、と考えました。そのため、始祖ムハンマドが、信仰とアッラーのために行ったといわれている、「行動と美徳に関するハディース」を取り入れようとするのです。

例えば、信者はムハンマドと同じ服装をし、彼と同じように地面で寝る(ベッドを用いない)などのことを行う必要があります。他にも、トイレには左足から入るズボンは右足から履く、など様々な規範があるようです。

こうした「ムハンマドの真似」をすることで、死後、天国へと導かれるということです。

4.インド最大級のムスリム団体:タブリーグ・ジャマートのまとめ

みてきたように、タブリーグ・ジャマートは、極めて穏健で、政治的な動きを排し、『コーラン』と『ハディース』に古典回帰的な動きを求める、イスラムの団体だということがわかります。

ただ、真面目なあまり、新型コロナが警戒される中でも、例年開催されてきた宗教集会を開催し、集団感染を引き起こしてしまったということなのでしょう。

デリーのニザームッディーンは、同運動の始まった聖地なので、海外からの参加者が多数いたことも悔やまれる点でした。機会があれば、新型コロナが蔓延した集会について紹介したいと思います。

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様々な悲劇的描写があり、不可触民がおかれた悲惨な環境を考察することができます。
ヒンドゥー教徒究極の目的である解脱へと繋がる、悟りの境地を実現する助けとなる、と考えられています。