ブリキのトランクとブリヂストンのサンダル

ブリキのトランクとブリヂストンのサンダル

人間は生活に役立つさまざまなものを作り出して来ました。機械化の進んだ国ではその恩恵を十分に受け、そうでない国では人の手が工夫を凝らします。

ブリキのトランク

インドにはブリキ製のトランクがあります。これを売っている店の主人によると、「4、5千年前からある」そうです。もっともブリキの製造が始められたのが13世紀中頃のボヘミアですから、これはちょっと眉唾物ですが。

ブリキとは薄い鋼板に錫(スズ)をメッキしたものですが、錫の歴史は非常に古く、紀元前のメソポタミアやエジプトにその起源を求められます。鉄の表面を錫で覆うアイデア自体は、古くからあったようです。ボヘミアで誕生したブリキの技術をドイツが学び、その後イギリスが学び、17世紀ごろには量産が始められました。圧延機で伸ばす技術はそれから100年後の事で、それまでは人手で叩いて伸ばしていました。

トランク屋の主人が言う「4、5千年前」はともかく、300年ぐらい前には使われていてもおかしくないので、東インド会社が使用した可能性は充分にあります。本国イギリスとインドを往復する船を、空船で走らせるのはもったいない、何か積み込みたい。そう思って彼らはインド行きの船にブリキの板を積み込みました。安価な人手がふんだんにあるインドで、加工して商品に仕上げようと思ったのです。で、出来上がったのがブリキ製のトランクでした。

日本で「ブリキ製」と言うと、どうしても昔の安っぽい玩具のイメージが付きまといますが、色付けされていないブリキの板は銀板のように白く輝いて、虚心に見るとなかなか美しいものです。

意外と使いやすく丁寧な造りです

トランクは30cm×50cm、深さが20cmのサイズの物で、重さは1.8kgと超軽量です。「世界一軽いトランク」を売り物にしている、ドイツリモア社のアルミ製トランクが、この3分の2ほどの容量で2.4kgありますから、軽さに関しては他の追随を許しません。しかも値段はたったの150ルピー(233円ぐらい)です。大きいものでは大人が2人すっぽり入るサイズのものもあり、これは花嫁道具を運ぶのに使われます。

留め具も把手も本体も別々の会社で作られ、最後に組み合わせます。布による裏張りもなく、乱暴に扱うとすぐぼこぼこになってしまいそうで、割れ物・壊れ物は入れられません。しかし蓋を開くと親切なことに、パスポートや手帳を差し込んで収納できるスペースが作られています。缶詰の蓋で指を切った覚えのある方にはちょっと怖いかもしれませんが、切断面を撫でまわしてみても、どこにも引っ掛かることなく、実に滑らかに仕上げられています。

ブリヂストンのサンダル

以前、1900年代半ば頃まででしょうか、インドではラクダの皮で作った「チャッパル」と呼ばれるサンダルが愛用されていました。さまざまなデザインがあり楽しいのですが、難点は雨に弱い事でした。そこで古タイヤを原料にしたものが作られ始めます。結構足に馴染んで履きやすく、当然雨などはへっちゃらで、しかも裏返せば「BRIDGE-STONE」と言う、日本の有名ブランド名が入っています。そう、これは日本のブリヂストン社製の、古タイヤを元に作られたものなのです。

そのころ古タイヤは産業廃棄物として、インド商人にただ同然で売り渡されていました。これを「モチー」と呼ばれるインドの靴屋の男たちが受け取り、器用にサンダルに加工したのです。接着剤で張り合わせた幾層ものゴムタイヤを、薄いゴム板状に剥がし、足裏やベルトなど各パーツごとに切り抜きます。腕に覚えのある彼らは、タイヤのカーブや膨らみをそのまま生かして、足に心地よくフィットするサンダルに仕立てました。タイヤ1本から、70足ほどのサンダルが出来るそうです。

「ミシュラン」や「ピレリ」と競合しないかと思いますが、日本とインドの地理的関係が味方をしています。喜望峰回りやスエズ運河経由では運送費が高くなるので。

現在はナイキやリーボックが幅を利かす

当時の値段で一足10ルピー(約35円)、場所によっては倍の値段を取られますが、それでも高くても100円以下です。インドの車のタイヤは、つるつるになるまで使い倒されるので、サンダルに加工はできないそうです。磨り減って溝がなくなっても、上から溝のある古タイヤをかぶせて使用していたとか。

現在では日本の通販サイトでも、インド伝統の細密画や美しい刺繍で飾られたサンダルが売られていますが、古タイヤ製のサンダルは、ほとんど飾りのない実用本位のものです。現在都市部では、ナイキやリーボックのスニーカータイプのサンダルを履く若者が街を闊歩していますが、農村部へ行けばまだまだブリヂストン・サンダルは健在です。

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