インドのセキュラリズム

インドのセキュラリズム

90年代のBJP政権誕生以降、インドの政治問題で注目されてきたのがセキュラリズムです。

インドでは政治・行政において、従来は、宗教の信者の多寡に関わらず、平等に扱うというルールがありましたが、現在、そのタガが外れつつあるのではないかとの懸念があります。

今回は、インドのセキュラリズムに注目をします。

1.セキュラリズムって何?

セキュラリズムは、一般的に世俗主義、非宗教主義といわれ、信教の自由を保障し、宗教に対する国家の中立性・不介入や国家による特定宗教・民族などを優遇することの禁止を意味します(政教分離)。国家権力と特定宗教の結びつきを禁止することで、宗教的マイノリティの権利を守ることが、民主主義の維持には必要とされるため、重要視されます。

独立後のインド、特に国民会議派政権は、このセキュラリズムを掲げ、貧困問題への取り組みなど、国民の分断を解消すべく取り組んできました。

その一方、他の南アジアの国々は、建国の理念が、イスラムなどの信仰を守り、それに基づく国家運営を求める国々(パキスタンバングラデシュなど)が多くあります(ただし、一定の規制はありながらも、信教の自由はあります)。

セキュラリズムの重要性を肯定し、受け入れている国は多いですが、近年、セキュラリズムを国家運営の要としていた国家でも、宗教原理主義的な思想が表出し、世界から批判を向けられています。よくやり玉にあがるのが、エルドアン政権以降のトルコや、BJP政権以降のインドで、反セキュラリズム的性格をもっているといわれています。

2.インドのセキュラリズム

インド憲法は、その前文において、インドが世俗国家(secular state)であることを宣言し、以下のことを保証しています。

  • 第25条の「信教の自由」
  • 第26条の「宗教に関連する事務管理の自由」
  • 第27条の「特定宗教の布教のために税を徴収することの禁止」
  • 第28条の「国の管理する教育施設における、宗教教育及び礼拝に参加することの自由」

などです。

しかし、これらの規定は、国家が宗教へ関与しないことを意味していません。例えば、寺院への参拝の自由化というように、社会改革的意味合いが見いだせれば、国家の宗教への関与が認められるということです。これは、独立期にガンディーがインドに広めようとした、不可触民への寺院開放運動などの影響といえます(実際には、ガンディーの運動によって不可触民に解放された寺院は、廃墟がほとんどでした)。国は特定の宗教でなく、すべての宗教に対して、信教・布教の自由を促進するという立場をとっているため、その障害となっているものがあれば、国が関与・協力するということです。

このように、全宗教を平等に布教・信仰できるという立場を、国はとっています。インドがセキュラリズムを国是としているのは、民主主義国家であることも理由にありますが、国内にヒンドゥー教やイスラム教をはじめ、多くの宗教信者を抱えているためです。

最新の国勢調査(2011年)の比率は、ヒンドゥー教徒79.8%、イスラム教徒14.2%、キリスト教徒2.3%、1.7%、仏教徒0.7%と、以下続いていきます。割合でみると、ヒンドゥー教徒以外はマイノリティにみえますが、実際にはイスラム教徒だけでも約1.7億人、キリスト教徒は約2800万人というように、かなりの数の信者を抱えています。

インド独立運動当時からスローガンとして掲げられていた「」を達成するためには、マジョリティであるヒンドゥー教徒のように、特定の宗教を優遇しては、国民統合・結束が困難になると考えたため、憲法の前文にセキュラリズムを掲げたのです。

3.反セキュラリズムの台頭

独立後のインドは、コミュナリズムと呼ばれる、特定の宗教の優位性を主張する考えを抑える統治を行ってきました。しかし、こうした統治は、一部のヒンドゥー教徒にとり、他の宗教を不当に優遇しているとの不満を溜めることになっていきました。

こうした不満を上手く利用したのが、1990年代以降拡大した現政権のBJPです。BJPは、RSSというヒンドゥー至上主義団体を母体に持つナショナリスト政党といわれており、ヒンドゥーの不満を吸い上げることで大躍進したのです。

BJPに起因する問題として最もあげられるのが、「コミュナル問題」という宗教対立です。インドではしばば起きる、ヒンドゥー教徒と他宗教の衝突も、たいてい、ヒンドゥー至上主義者の扇動(BJP指導者の名前が挙がることもある)があり、2020年1月に起きたデリーの暴動の際も、そうでした。

このヒンドゥーの優位性を主張する傾向にあるBJPは、的傾向もあり(既存の歴史観を無視した歴史教科書の書き換えも行われている)、世界的に懸念の声が上がっています。

4.インドのセキュラリズムのまとめ

みてきたように、インド独立以降、守られてきたインドのセキュラリズムは、BJPによる政権奪取以降、揺らいでいるといえます。イスラム教へのヘイトを煽るBJPの指導者が、ニュースにしばしば登場するなど、さまざまな問題点が表出しています。

個人的には、インドにはセキュラリズムを守り、多様性を認める中道の政治を守ってほしいと願っています。そして、ヒンドゥー至上主義の影響力の薄まることを祈って、今回の記事を〆たいと思います。

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