ヒンドゥー文化の善悪観

ヒンドゥー文化の善悪観

ヒンドゥーの政治・・社会・文化の土台ができたのが、ヴェーダ時代(5-BC5世紀頃)です。そして今回紹介する、ヒンドゥーの善悪観は、初期のヴェーダ時代(BC15-BC10世紀頃)に、宇宙の秩序を守るために形成された思想といわれています。

宇宙の秩序は、ヒンドゥー世界の秩序と繋がり、善悪の思想は、ヒンドゥー秩序の維持のために、極めて重要な思想ということになります。

今回は、宇宙の秩序を守るための原理と考えられてきた、(rta:天則)を解説したのちに、善悪観をみていきます。この善悪観は、ヒンドゥー教の特徴である「浄・不浄の観念」に、極めて大きな影響を与えています。

1.リタ

リタ(天則)は、ヴェーダ時代のインドで、全宇宙の秩序を守るための原理と考えられていたもので、『ヴェーダ聖典』の中でみることができます。リタには、天体の動きや自然界の秩序、さらには、祭式や人の倫理のあり方など、ヒンドゥー文化において、極めて重要な規則が決められています。

神々も人も、リタを守る誓いをたてなければならず、絶対的な服従を求められます。

リタは、規則であり、実現すべき真理でもあるといいます。

『ヴェーダ』において、天界(神々の世界)や地上(人々の世界)で、リタが遵守されているか、常に監視されおり、少しでも破ったものには、罰が与えられるといわれています。

神は、リタを破るものを厳しく罰しますが、遵守するものには健康や長寿を、さらに死後には、楽園を保証します。

リタは、その後、「(法)」として、さらに発展していくこととなります。リタやダルマを遵守するものが「」で、背くものが「」ということになっていきます。

2.善と悪

全宇宙が従うべき法則である、リタに則った行動が「善」であるとの思想を、前項で紹介しました。善を表す言葉としては、「サドゥー(sadhu:正直な)」や「サティヤ(satya:真実)」があります。

こうした言葉からもわかるように、嘘偽りがなく、リタに従った生活を送る人が、善人、徳をもつ人、徳を積んだ人として、尊敬されます。

その後、「リタ」いう名は薄れていきますが、こうした規範は「ダルマ」として発展し、ヒンドゥー文化に継承されます。

ただ、初期のヴェーダ時代には、輪廻説が広まっていなかったため、善と対立項となる「悪」の概念は、発達していなかったといいます。

2-1.輪廻説の広まりと善と悪

輪廻説が人々の間に広まると、良い転生をするためには「」を積む必要があると考えられ、逆に、悪い転生をするものは、「」とされる行為(規範を破り続ける)が重ねられた結果、と考えられるようになります。

こうして、永遠に続く輪廻の中で、善と悪の対立構造が、ヒンドゥー文化の中で確立していきます。

現世の行いが、来世に深く関わるとの考えが浸透し、善行を行うことが、社会や宗教的な義務となります。そして、宗教的義務を破ることが悪行となり、社会・宗教的なを生じさせることになります。

2-2.カルマ

カルマは、輪廻説とともに、急速に理論化されていった論理で、善行と悪行は「カルマ(業)」の中で、分類されることになります。

ヒンドゥーの規律(法)を真摯に守っても、怠惰に不道徳に暮らしていても、死ねば同じでは、不公平であるとの考えから、このカルマの論理は発達したといわれています。

自分が行ったカルマ(・悪行)の結果は享受しなくてはならず、これを「自業自得」ということで、人々は受け入れることになりました。それが、輪廻です。

カルマに縛られた生活は、ヒンドゥー文化の中では「」と考えられており、永遠に続く、輪廻の「苦」のループから脱することを「解脱」といいます。

解脱は、ヒンドゥー教徒の究極の目標といわれ、そのためには、カルマを滅する必要があるといわれています。

2-3.浄・不浄の観念

ヒンドゥーにとってカルマは、日々の生活と切り離せないもので、生まれた時から死に至るときまで、蓄積されるものです。

善行はプニヤ(pnya:功徳)、悪行はパーパ(papa:罪障)と呼んでいます。このプニヤという語の原語は、「清浄な」または「端正で美しい」などの意味を持ちます。

そこから、善行は「清浄性」、悪行は「不浄性」という観念が、形成されていったということです。つまり、ヒンドゥー教の最も大きな特徴の1つである、「極度に発達した浄・不浄の観念」は、ヴェーダ時代に形成された「善悪観」がもとになったということです。

3.ヒンドゥー文化の善悪観のまとめ

現在も、ヒンドゥー文化の中に深く根付いている浄・不浄の観念は、輪廻説の広まりとともに、善行の対立軸として、悪行が認識されたことに由来しているということでした。

こうして、ヒンドゥーの文化の動きを改めてみてみると、様々な再発見があります。また機会があれば、ヒンドゥー文化黎明期について、紹介してみたいと思います。

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