カースト制度と輪廻

カースト制度と輪廻

輪廻の思想は、仏教の中で伝わってきている思想なので、ご存じの方も多いと思います。「生まれ代わり」に関するストーリーは、映画など、さまざまな場面で目にします。その「生まれ代わり」に該当するヒンドゥー文化の思想が輪廻です。そして、この輪廻に深く関わる

今回は、業と輪廻がカースト制度を維持するうえで、どういった作用を果たしたかをみていきます。

1.輪廻

輪廻は、ヒンドゥー教やカースト制度を支える、重要な要素になっています。一般的には「生まれ代わり」と理解されているこの思想は、仏教にも影響を与え、日本でも広まっています。

ヒンドゥー教徒は霊魂不滅の思想をもっており、輪廻の前提となっています。霊魂不滅の思想とは、肉体が死んでも魂は死なず、生き続けるというものです。肉体の死後、霊魂は前世で行われた業(行為:カルマ)に縛られ、さまざまな姿に生まれ代わる(輪廻:サンサーラ)と信仰されています。

輪廻の流れは、以下のとおりです。

  1. 死後、火葬される
  2. 月の世界に行く
  3. 月の世界を離れ、再生する

この再生の際に、前世の業が影響します。

2.業と解脱

輪廻に影響を与える「業」とは、どういったものなのでしょうか。業は「行為」を意味する「カルマ(Karma)」の漢訳語です。善人も悪人も、死んだら同じというのは不公平、という考えから、古代ヴェーダの時代に因果応報思想が生まれました。

その後、BC500年ころのウパニシャッドでは輪廻思想が成立しており、急速に理論化がされています。

業は、

  • 身体的行為(身業)
  • 語るという行為(口業)
  • 思うという行為(意業)

に分類されます。これは、人間のすることすべてに、業が生じるということを表しています。

すべての業は功徳と罪障(浄性を帯びる行為とそうでない行為)、法と非法(ヒンドゥ―の規範に従った行為とそうでない行為)として生涯、人の身体に積み重なっていきます。

こうして積み重なった業は、輪廻(基本的には来世)に際して果報として影響します。果報は、前世の行いの結果として、現世で受ける報いという意味です。つまりヒンドゥー文化では、自分が積み重ねた業の結果を受け入れることが原則で、それは「自業自得」という考えです。

ヒンドゥー教徒は、自分の業の責任を取る必要があると信じており、業が積み重なった結果を受け入れるために、輪廻をする必要があるということになります。輪廻は無限に続き、生まれてから死ぬまでには業が必ず生じるために、輪廻は永遠に続くことになります。

業は「罪」や「不浄」とセットとなっているため、ヒンドゥー教徒はこの苦しい輪廻から抜け出したいと考えるのです。それが「」です。ヒンドゥー教徒の究極の目標である解脱は、輪廻思想誕生とセットで生まれたと考えられています。

解脱とは、ヒンドゥー教の最高神ブラフマー(梵天)がいる世界に達し、二度とこの世に戻らないことをいいます。この世に再生することがないため、死ぬこともなく、不死を得たことになります。

3.カースト制度と輪廻

業や輪廻の思想は、カースト制度の維持に密接にかかわっています。つまり、この思想のもとで、ヒンドゥー教徒は次のように考えました。

  • 今のカーストに生まれた理由は、前世に由縁する
  • 今のカーストの固有の仕事に専心することによってのみ、来世の幸福が約束される
  • カーストの仕事をいかにやったとしても、功徳は積めない

ヒンドゥ―教徒には、ヒンドゥ―の規範に従うことが求められています。これは自身のカーストの職業、つまりヒンドゥー文化のルール(宗教規範・倫理・慣習など)に従って生きることを意味します。

究極の目標として解脱思想があり、現世における規範の順守は、来世において良い暮らしをするために守られる必要があります。その考えが、各カーストを束縛しました。こうした思想が、カースト社会を安定的に、強固に維持させるうえで果たした役割は大きかったといえます。

4.カースト制度と輪廻のまとめ

輪廻の思想を考えると、ヒンドゥー教徒がどういう文化の中で生きているか、少し理解できると思います。現世でヒンドゥ―のルールを踏み外すと、下手したら不可触民になってしまうというような信仰です。逆にいえば、不可触民は前世の行いが著しく悪いから、差別されるのは当然だ、ということになってしまいます。

日本に馴染みのある輪廻思想ですが、インド文化、ヒンドゥ―教徒の規範として、深く根付いています。浄・不浄の概念とともに輪廻思想は、カーストやヒンドゥ―絡みのニュースの背景を考えるときに、理解を深める要因となるでしょう。

参考文献

  • 山崎元一『インド社会と新仏教 アンベードカルの人と思想』刀水書房、1979年
  • 小谷汪之『不可触民カースト制度の歴史』明石書店、1996年
  • 小谷汪之『インドの不可触民 その歴史と現在』明石書店、
  • 小谷汪之『穢れと規範 賤民差別の歴史的文脈』明石書店、1999年
  • M.B.ワング著、山口泰司著『ヒンドゥー教』青土社、

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イギリス支配末期には、侵略してきた日本軍による爆撃もあり、多数の死者を出したといいます。
浄・不浄の概念と輪廻の思想は共通して信じられ、規範として取り入れられています。