用語解説:留保制度 不可触民・部族民などの行政カテゴリー

用語解説:留保制度 不可触民・部族民などの行政カテゴリー

インドには、社会的に後進とされている、不可触民部族民を指す行政カテゴリーがあります。これを定め、様々な支援を与えているのが留保制度(Reservation System)です。

この制度では、後進諸グループに、さまざまな「留保枠」を与え、社会的自立を促そうというものです。

今回は、インドのニュースなどでもしばしば登場する「留保制度」についてみていきます。インドで暮らす多くの日本人には、直接関わりのない制度だと思いますが、インド社会では極めて重要な制度となっているので、知っておいて損はないものです。

1.留保制度ってどんな制度?

留保制度(Reservation System)は、社会経済的に「後進」とみなされ、かつ特定カテゴリーに属する人々を対象に、高等教育への入学許可数や、公的な雇用、国会・州議会の議席数などを、一定比率で優遇する、インドの制度です。

インド独立後、不可触民を中心とした「指定カースト(Scheduled Caste)」、先住民族を中心にした「指定部族(Schduled Tribe)」が、優遇対象となる行政カテゴリーとして定められ、さらに1993年から、この2つに「その他の後進的諸階級(Other Backward Class, 以下OBC)」が加えられています。

これらカテゴリーに属する者たちが優遇される「留保枠」は、国や州、地方自治体などによって、独自に与えられます。これは後進階層に、・仕事・政治などに平等な機会や権利を与えることで、自立する力を与えることを目標としています。

現行のインドの留保制度では、対象カテゴリーに選ばれていても、留保枠でなく一般枠での応募も可能となっています。その場合は、一般の人々と同じ条件で、ふるいにかけられることになります。そのため留保制度は、各カテゴリーの代表者の確保が目的でなく、「社会的弱者」の社会進出を目的としているといえます。

独立以前から、一部の州や藩王国では、行政機構におけるバラモンの寡占に制限を与え、非バラモンに教育・雇用の機会を与える措置が取られていました。

独立期において、不可触民の偉人アンベードカルは、不可触民をはじめとした「後進階層」の分離選挙を求めていましたが、留保制度はそれを否定する形で、導入されています(ガンディーは、ヒンドゥーの分断を生むとして、分離選挙に強硬に反対していました)。

留保制度はインド独立後に、すぐに施行されましたが、教育や雇用の分野の留保枠は、1960年代まで、フルに活用されることはありませんでした。枠は用意されていても、資格や試験の難易度がまだまだ高すぎたため、基準に達する人が少なかったためです。

そこで、1960年代以降、資格・試験基準が緩和され、非十足分を翌年に持ち越す制度の強化などが行われることで、上級職や難関大学の、留保枠における充足率は高まってきました

憲法発布当初、議員の議席留保枠は10年を期限としていましたが、現在も延長され続けています

2.指定カースト(Scheduled Caste, )

SCは、インド憲法第341条に基づき、大統領によって、州または地域ごとに指定された諸カースト、またはその一部を指す、行政上のカテゴリーです。

指定の基準が「不可触民差別」を受けていることが前提となっているため、便宜的に、カースト制度における不可触民を指す言葉として、SCは日常的に用いられています。「不可触民」という言葉は差別的であるため、避けられることが多いです。

ただし指定カーストは行政カテゴリー・用語であるため、実際のヒンドゥー社会で不可触民とされる人々とは、異なる範疇で使われています。

例えば、Aの地域の不可触民カーストドービー(洗濯人カースト)」は、教育も受けられており、雇用の差別も少ないと判断された場合、不可触民でも「指定カースト」に認定はされないということになります。

また、Bの地域の不可触民カーストドービー」は、教育を受けられず、雇用の機会も少ないと判断された場合、「指定カースト」に認定される、といったイメージです。

3.指定部族(Scheduled Tribe)

指定部族は、インド憲法第342条に基づき、大統領によって、州または地域ごとに指定された、「部族」の諸コミュニティの、行政上のカテゴリーです。

指定の基準は、言語や宗教など、文化に独自性をもち、社会経済の分野における後進性が認められ、山岳地帯など、周囲と隔絶して暮らすこと、などが挙げられています。

ただこの条件は、数値化されるものでないため、客観的基準となっていないことを行政側も認めており、指定基準は明確となっていません

憲法において、「指定部族」は「指定カースト」と対をなす、後進諸階級を構成する概念となっており、行政上の位置づけに共通点が多くあります。

4.その他の後進諸階級(Other Backward Class, OBC)

OBCは、1993年に留保制度に加えられた、指定カースト、指定部族に属さない「後進諸階級」です。

この指定基準は、教育や雇用など、社会的に指定カースト、指定部族同様の後進性が認められることとなっています。

ただ、このカテゴリーの認定も明確となっておらず、しばしば問題は指摘されています。

5.用語解説:留保制度 不可触民・部族民などの行政カテゴリーのまとめ

留保制度について紹介しました。インドでは、不可触民などへの差別的慣習が、依然として強く残っているため、こうした制度が必要となる背景があります。

ただ、この制度は、「後進階級」を支援するという重要な使命があると同時に、支援を受ける人々を固定化させてしまっているという、負の側面もあります。

近年、「指定カースト」として支援を受けていたカーストグループが、実は社会的に自立をしていて、教育・金銭面などでも問題がないにもかかわらず、支援のうまみを捨てたくないがために虚偽申請をして、摘発される事件が起きています。

ただ、実際に支援を必要とする人々が大多数なので、「後進階級」とされる人々の向上を願って、今回の記事を〆たいと思います。

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ムスリム、シク教徒、不可触民、ドラヴィダ系インド人などが選ばれる傾向にあります。
人々の教化に多大な貢献をしたとして、インド政府から讃えられています。