クワッド:日米豪印安全保障対話

クワッド:日米豪印安全保障対話

クワッドという日本・アメリカ・オーストラリア・インドの間で行われている、安全保障の対話の枠組みをご存じでしょうか。この枠組みは、中国の脅威に対抗するために作られたといってもいいもので、インド洋から太平洋に至る、中国の進出による不安定化に、楔(くさび)を打とうというものです。

今回は、このクワッドとインドの考えについてみていきます。

1.クワッドって何?

クワッド(クアッド)はQuad、Quadrilateral Frameworkの略で、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4ヵ国による、安全保障に関する非公式な戦略対話です。クワッドは、自由主義や民主主義という共通の価値観のもと、インド太平洋域内の安全保障上のバランスと安定のため、4ヵ国の共通認識の下、諸問題にどう対処していくべきか対話を行うというものです。

この枠組みが目指す安定は、中国を除く周縁部の国々の安定であり、必然的に、拡張主義的動きを取り続ける中国を、けん制するものとなっています。現在、日本、アメリカ、オーストラリア、そしてインドが中心的役割を求められている、「アジア太平洋構想」のための対話とも言えます。

2007年に第1回の対話が行われています。日本は安倍総理、アメリカはチェイニー副大統領、オーストラリアはハワード首相、インドはシン首相の参加で開かれました。

その後、オーストラリアの選挙で勝ち、政権交代をした「リベラル」のラッド首相が、一方的に撤退を表明したため、しばらくの間中止となりました。インド・オーストラリア間の未成熟な関係に懸念を示した、親中派だから、などさまざまな憶測を呼びました。ただ、中国との経済関係や国境問題を抱えているインドが、対中配慮や伝統的な「非同盟」にこだわり、足並みを乱すのではないかとの懸念があったことも事実のようです。しかし、インド側からすると、オーストラリアの一方的な離脱への不信感は長引き、そのためにクワッドの再開に時間がかかったといわれています。

日本、アメリカ、インドの軍事演習は引き続き行われ、練度向上や中国へのけん制につながっています。またアメリカ海軍が、オーストラリア各地に新たに配備されています。

4ヵ国各国間の交流は行われ、2017年に開催されたASEANにて、クワッドの再開が合意されました。この再開の合意を決めた会合は、日本の安倍首相、アメリカのトランプ大統領、オーストラリアのターンブル首相、インドのモディ首相で行われています。この合意は、中国の南シナ海進出をはじめとした、中国の領土的野心に起因する緊張が広がる中で行われました。

この対話と並行して、前例のない規模の軍事演習が、インドのベンガル湾マラバールで行われています。こうした動きに、中国は怒りの声明を出し、外交ルートを通じて正式の抗議を行っています。

2.クワッドとインド

インドは国際的に人権問題等を抱えていますが、地政学的・経済的にも急速に存在感を高めています。クワッドのような4ヵ国間の関係はありますが、インドは伝統的に非同盟主義を培ってきたため、他国のいさかいへの不干渉という傾向ももっています。

インドはクアッドに参加し、アジア太平洋の安定化のための一翼を担っていますが、どのような捉え方をもっているのでしょうか。

  • 非同盟主義を培ってきたインドは、アメリカ-中国といった2極化を否定的に捉える傾向にあり、法の支配、相互協力のもとの国際秩序の多極化を伝統的に志向する
     → 日本の安全保障上の制約をなくす動きを支持し、日本の地域における影響力向上を認めています
  • アメリカをはじめとする西側世界との経済的アクセスを近づけ、インドの戦略性の価値を高める
     → 従来は社会主義的経済政策をとってきましたが、現在はグローバル経済の推進を図り、そのためアメリカに近づき、先進技術や市場の利益を受容しようと考えています
  • 多極化を志向するということは、アメリカや中国といった突出した国の影響力の低下を志向しているといえ、アメリカ主導の世界を支持する日本やオーストラリアとは、異なる展望を持つ
     → イラクへのアメリカの軍事行動に反対し、戦後の復興支援においてもアメリカの指揮系統に組み込まれることを否定的に捉えたため、部隊の派遣を見送っています

必ずしもアメリカ・日本・オーストラリアと一枚岩ではないのがインドです。

クアッドやアジア太平洋構想のようなアメリカ側の動きもありますが、ロシアとは歴史的に安定した外交が行われており、近年、インド政府はロシア兵器の購入を決め、アメリカとの間で大きな問題となっています。

ただ、インド周辺で中国の脅威が高まるため、クアッドのもつ重要性は、中国へのけん制という意味でもインドは理解しています。インド洋で行われている4ヵ国合同の軍事演習も、中国へのけん制として大きな意味をもち、中国の脅威が深刻となっている周辺国への、インドのプレゼンスの向上にもつながっています。

3.クワッド:日米豪印安全保障対話のまとめ

中国の脅威が高まる中、日本・アメリカ・オーストラリア・インドの戦略的なビジョンを話し合う枠組みとして、クワッドは続いています。

現状、スリランカのハンバントタ港が、中国の借金のカタに接収されたように、多くのインド周辺国が、中国の融資からの借金漬けに苦しんでいます。従来は非同盟主義をとり、他国への不干渉をとる傾向にあったインドですが、拡張主義的な中国の国策に危機意識をもち、自身のプレゼンスの向上を図るようになっています。

現在の世界は、アメリカと中国という新たなブロックが形成されていますが、近い将来、人口が世界一となり、GDPも日本を抜くといわれているインドが、第3極として登場する日は来るのか、期待して記事を〆たいと思います。

BlogMuraFC2BlogRanking

VISITORS HERE:87, HOLI GREEN TOTAL VIEWS : 931,268

Previous(down)/ Next(up)
マクマホン・ラインから中印国境紛争を振り返り、現在も領土問題が係争中の地域を展望します。
ヨーロッパで、ニームの樹が注目されるようになったきっかけは、1900年代に、ドイツの昆虫学者が目の当…