インドの代表的嗜好品:パーン

インドの代表的嗜好品:パーン

インドの嗜好品として有名なパーン(paan, pān)をご存知でしょうか。この名前を知らなくても、インド人が吐く赤い唾を、見たことがあると思います。あの赤くなるヤツが、パーンです。

今回は「不潔」との悪評がたつことが多い、パーンについて紹介します。

1.パーンって何?

パーンは、で広く親しまれてきた、嗜好品の一つです。

新鮮なキンマの葉の裏側に、暗褐色の阿仙薬(あせんやく)の濃い水溶液と、水に浸した消石灰(しょうせっかい)を塗り、細かく砕いた檳榔樹の実(檳榔実、びんろうじ)を三角形に包んだものが、一般的なパーンです。

これに甘味やスパイス、、ナッツなど、様々なものを足すことで、好みのパーンを作ることができます。

  • キンマは、湿潤地で栽培されるコショウ科コショウ属の常緑多年草で、心臓の形をするといわれるその葉には、去痰・健胃の薬効があります。
  • 阿仙薬は、ガンビールノキという植物で、収斂(しゅうれん)剤・口中清涼剤としての効能があり、正露丸などにも使われていることでも、知られています。
  • 消石灰は水酸化ナトリウムのことで、消毒作用があります。
  • 檳榔樹(びんろうじゅ)は、ヤシ科ビンロウ属の植物で、その実は軽い麻酔作用があります。

このパーンは、葉っぱごとまとめて、口に入れて噛むのが一般的です。かなり大きいものが多いので、噛むのも一苦労です。しばらく噛んでいると、軽い興奮作用や、酩酊感を得られますが、慣れるとその感覚は鈍ってくるといいます。

しばらく噛んだのちに、口から吐き出します。本来のマナーとしては、痰ツボに吐き出すことが求められるようですが、実際にそうしている人は、見たことがありません。口から吐き出すときに赤くなるのは、この檳榔樹の実によるもので、飲み込むと胃を痛めるために、吐き出すのが一般的です。

口から吐き出すタイミングは、人それぞれですが、ガムのように、20分くらい噛み続ける人もいるそうです。私は、清涼感は一切感じられませんでしたが、食後の清涼剤として、男女ともに人気ということです。ただ、私の周りのインド人女性は、人前で口に入れることを好む人は、いないように思えました。

ほとんどの町には、このパーンを売っている店があり(多くがタバコ屋を兼ねている)、たいていの店で、好みのパーンをオーダーできます。

パーンは、宗教的な意味も持っています。神への供物、客への歓待にも用いられ、さらには結婚儀式の際の贈物や、社会的契約の成立の際に、交換することがあるといいます。

伝統的な嗜好品のため、様々な神話にも、パーンは登場しています。

2.パーンの問題

パーンの一番の問題は、公共の場で、噛んだ後に、ゴミと一緒に唾を吐くことです。

インド人にとり、唾液は不浄の象徴(ヒンドゥー教は「浄・不浄の観念」が極めて発達し他宗教といわれます)であり、公衆衛生上も好ましくないため、しばしば批判の対象としてあがります。

近年、都心部では、道路の赤い汚れをみることも減りましたが、下町に行くと壁などに、パーンが吐き出された汚れが、こびり付いていることがよくあります。以前訪れたバラナシは、ガンジス川も不潔でしたが、街並みも、パーンが至る所に吐かれて、まったくもって肌に合わなかった記憶が、いまだに強いです。

もう1つの問題は、健康被害です。パーンに欠かせない檳榔樹の実ですが、口腔がんや咽頭がんを誘因する、発がん性物質を含んでいるといわれています。これは、国際がん研究機関(WHOの外部研究機関)が公表していることです。

また、この檳榔樹の実は、アルコール、タバコ、カフェインに次ぐ、依存性をもっているということです。

3.ヒンドゥー聖典に登場するキンマの葉

古代ヒンドゥー聖典として名高い『ラーマーヤナ』や『マハーバーラタ』には、パーンで使う葉、キンマが神性を与えられています。

ラーマーヤナ』の主人公ラーマに、キンマの葉で作った花輪を与えるといった逸話や、『マハーバーラタ』では、司祭の命により、ナーガ(蛇)の国へキンマの葉を取りに行く逸話が、記述されています。

ヒンドゥー文化では、こうした聖典の中で登場することは、神性を与えられることを意味し、神々への供物として、好んで用いられるようになります。

このような文化的背景もあり、キンマは、インド人の好む嗜好品を構成する葉として、長らく愛されてきたのだと考えることができます。

4.インドの代表的愛好品:パーンのまとめ

私も、インドのパーンを一度だけ食べたことがありますが、正直、清涼感のかけらも感じられませんでした。パーンワラーのおじさんが、英語を話せなかったので、適当に買ってみたのがいけなかったのかもしれません。

今回、改めてパーンをみてみると、甘いものから辛いもの、ナッツが入っていたり、はたまた燃えたまま口に押し込まれるものまで、様々なものがあることがわかりました。Fire Paan、パワーワードです。

また、パーンワラー※のおじさんと話す機会があれば、パーンに挑戦してみたいと思ったところで、今回の記事を〆たいと思います。


ワラー(wala)とは?

ここでは「~のおじさん」「~屋さん」というような意味で使っていますが、「~の奴(やつ)」や「~の物(もの)」のような、男性や女性や物に対してもつかえる、ヒンディー語の曖昧な代名詞(後置詞)のようなものです。

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