インドのライオンと獅子神ナラシンハ

インドのライオンと獅子神ナラシンハ

インドには、ライオンが生息していることをご存知でしょうか。頭数は僅かながらも、古代から現代にいたるまで生き残っており、その姿は、サファリでも観ることがきます。そしてこのライオンは、古代からヒンドゥー文化の中で、その雄姿が、様々な形で残されています。

その代表的なものが、ヒンドゥーの神であるナラシンハです。ライオンの頭をもつ神で、ご存知の方も多いと思います。

今回は、インドのライオンと、獅子神ナラシンハについてみていきます。

1.インドンのライオン

百獣の王といわれるライオンは、虎と並んで、ネコ科最大級の動物です。密林部で単独生活を主とする虎に対し、ライオンは平原部で群れて、生活を営みます。

以前は、アフリカ全域、ヨーロッパ南東部、西アジアからインド中部を生息域としていましたが、人の進出によって、多くの地域から姿を消すことになりました。

  • ライオンの群れは数頭からなり、その行動圏は20㎞四方で、水をよく飲み、大型草食動物を獲物とします。
  • 南アジアにおけるライオンは、インド西部グジャラートのギル(Gir)森林保護区にのみ、生息が確認されています。

ギル森林保護区は、森林保護区という名称ですが、実際には、樹木の多いサバンナで、サファリもあります。2015年時のライオンの生息数は、約523頭です。

2000年以前は、生息数は200頭をきっていましたが、繁殖がある程度は成功しました。が、依然として、絶滅の危機にあります。国際自然保護連合では、虎と同様に、ライオンは絶滅危惧種に認定されており、ワシントン条約でも、その輸出入は制限されています。

2.象徴としてのライオン

ライオンは、古代から様々な国々で、王の象徴の文様(もんよう)として使われてきており、インドでも同様です。

インド共和国の紋章には、背中合わせで座る4棟のライオンの紋章が描かれていますが、これはサールナート(ウッタル・プラデーシュ州東部バラナシ北6kmにある仏教聖地)から出土した、(BC3世紀頃のマウリヤ朝の王)の石柱に由来したものです。

これは、インドの紙幣にも描かれています。

インドと海を挟んだ隣国である、スリランカの多数派であるシンハラ人は、「ライオンの子孫」という意味をもち、現在のスリランカの国旗には、剣をもった獅子の姿が描かれています。

3.ナラシンハ

ナラシンハは、ライオンと人間のハイブリッドの、男の神様です。

胴体と下半身は人間で、ライオンの頭と爪をもつ神として描かれます(しばしば腕が複数もって描かれる)。

ヴィシュヌの第4のアバター(化身)として、広く知られた神です。

ヴィシュヌは、世界の維持を司る神として、ヒンドゥーの神話で描かれ、世界の危機に際し、化身の姿で現れて、世界を危機から救います

ナラシンハが、ヴィシュヌの化身として登場する神話を、紹介しましょう。

3-1.ヴィシュヌの化身ナラシンハの神話

兄弟を、ヴィシュヌの化身(第3の化身ヴァラーハ、猪の化身)に殺され、その復讐を願うヒラニヤカシプ(hiranyakashipu)は、苦行を行った結果、ヒンドゥー最高神であるブラフマーに認められ、不死身の身体を手に入れます。不死身の身体とは、人間にも動物にも、昼夜問わず、あらゆる武器をもってしても、殺されない身体です。※

ヒラニヤカシプは、アスラ族(阿修羅)の王で、無敵の身体を手に入れたヒラニヤカシプは、天界を征服します。

そして、地上にいるすべてのヴィシュヌ信者を、迫害します。

ヒラニヤカシプは、圧倒的な力を誇っていましたが、いつの日からか、息子であるプラフラーダ(Prahlada)が、熱烈なヴィシュヌ信者となっていました。

ヒラニヤカシプは息子を咎めましたが、聞く耳をもたなかったため、息子を殺そうとした、その時、息子の背後の柱から、ナラシンハが飛び出し、ヒラニヤカシプを引き裂き殺します。

ナラシンハは、人間でも動物でもない存在で、殺した時間帯は夕刻(昼でも夜でもない時刻)、身体を引き裂いたのは武器ではなく、ナラシンハのもつライオンの爪であったため、殺害ができたということになります。※

その後、ヴィシュヌ信者である息子のプラフラーダが、王位を継いだため、世界の混乱は収まりました。

3-2.ナラシンハの性格

ナラシンハは、化身の神話を象徴するように、神(主にヴィシュヌ)への献身者を悪から守るため、「偉大な守護者」として知られています。その悪は、外的な悪のみならず、自身の内側に生じる悪からも、身を守ってくれるといいます。

ナラシンハの神話は、様々な地域で古典舞踊になっており、舞踊を神に捧げることで、ナラシンハの守護を願うということです。

3-3.ナラシンハ信仰の聖地

アーンドラ・プラデーシュ州クルヌール(Kurnool)地区にある、アホビラム(Ahobilam)寺院は、ナラシンハ信仰の聖地として知られています。

  • アホビラム寺院は、険しい山地にあるため、礼拝は大変困難です。
  • 15-16世紀の間に建設された寺院です。
  • ナラシンハがヒラニヤカシプを殺した神話を、観ることができます。

4.インドのライオンと獅子神ナラシンハのまとめ

インドはが多いイメージで、ライオンのイメージを、私は持っていませんでした。が、改めてみると、ライオンにまつわる文化は多い、ということが分かります。

古代インド人が、ライオンと戦ってきたのかな、などと想像してみると、面白いです。ライオンカレーがあったかもしれません。

また機会があれば、インドの動物にまつわる文化を紹介したいと思います。


※「不死身の身体とは、人間にも動物にも、昼夜問わず、あらゆる武器をもってしても殺されない身体です」

このため、無敵ではない夕刻、武器ではないによって殺された、ということです。

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