ヒンドゥー教の地獄:ナラカ

ヒンドゥー教の地獄:ナラカ

日本でも信仰されている地獄という概念ですが、インドのヒンドゥー教に由来する考えが伝わった、ということはご存知でしょうか?

今回は、ヒンドゥー教における「地獄」の概念を中心にみていきます。

1.ヒンドゥー教の地獄

ヒンドゥー教で地獄は、ナラカ(naraka)といいます。日本に伝わったナラカという語は、音写され、「奈落」という地獄を指す語として、定着しています。ヒンドゥー教における地獄は、罪を犯した罪人が、死後に責め苦を負う場所とされています。

その罪はね宗教的な罪(ヒンドゥ教でいうとされる行為)から、実際の罪(殺人、盗みなど)まで、さまざまな罪が地獄で裁かれています。

ヒンドゥー文化は、諸派によって信仰は様々ですが、一般的にの観念もっています。この観念は、人間が生前に行った行為(業・カルマ)の結果を、死後に受け入れるという考えです。

この生前の報いを受けるという、因果応報の考えによって、死後の世界で罰を受ける場所としての「地獄」に、宗教・文化的関心が集まったといわれています。

ヒンドゥー教は、地上世界を中心と捉え、上方に、下方に地下世界の、3つからなる世界観をもっています。

地下世界の、地上に近い層には、アスラ(鬼神、阿修羅)やナーガ(蛇)族などが住むと考えられ、そこは天界に匹敵するほど、美しい世界だといわれています。

地獄は、その下の層に位置します。地獄は、仏教では単純な構造ですが、ジャイナ教では8層からなっています。

ヒンドゥー教における地獄は、7の地獄から140の地獄など、文献ごとに様々な描かれ方をしており、統一された概念はありません。多くの場合は、犯した罪に即した地獄が、文献の中で挙げられています。

罪人がどのような地獄に行くかは、地獄の王(Yama、日本には閻魔として伝わる)の審判によって決まります。

2.聖典『ヴェーダ』における地獄の記述

ヒンドゥー古代聖典の『ヴェーダ』において、地獄に関する記述をみることができます。

『ヴェーダ』はヒンドゥー教の根源思想をみることができ、カースト制度と結びつくことで、ヒンドゥー社会・文化の形成に、大きな影響を与えたと考えられています。

BC1200~BC1000頃に編纂されたヴェーダ文献最古の『リグ・ヴェーダ』の中には、地獄を表す言葉が登場します。「地下世界」「閉鎖された世界」「暗黒の世界」が描かれ、行い(特に宗教的)の悪い人間は、そうした場所へ堕ちるべき、と願うマントラがでてきます。

BC1000~BC500頃に編纂された『アタルヴァ・ヴェーダ』にも、地獄の様子が描かれています。バラモンに悪事を働いたものが、流れる血の中で、髪の毛を噛みながら座っている様子が描かれ、それは地獄を表しているといわれています。

バラモンの祭式について書かれている、BC800頃に編纂された、ヒンドゥー文化・思想上重要と位置付けられている『シャタパタ・ブラーフマナ』にも、地獄の描写があります。ここでは、アグニホートラと呼ばれる、浄化の儀式を生前行わなかった人間が、切り刻まれ食べられてしまう、とされています。

ナラカという語がはじめて確認されたのは、BC600頃に編纂された『タイティリーヤ・アーラニヤカ』です。ここでは、死者を裁く死者の王としてのヤマや、南東・南西・北東・北西にあるナラカが言及されています。

3.地獄の描写

ヒンドゥー教の、古代から伝わる文献の中には、様々な地獄が描かれています。

死後、地獄へ行く流れをみてみましょう。

  1. 罪人は恐ろしい死を遂げ、地獄の王、ヤマの使者に責め立てられながら、ヤマのもとへ連れていかれる
  2. 罪人の、生前の罪が読み上げられ、ヤマによって、どの地獄にいくか判決を下され、罪に沿った地獄に投げ込まれる
  3. 罪人は、地獄での責め苦に、意識を失うこともできず、世の終わりまで責め苦は続けられる

次に、数多くある地獄の描写の中から、いくつか紹介してみましょう。

  1. 血、糞尿、膿、唾、痰などで満ち、悪臭を放つ
  2. 蛆(うじ)の湧いた屍肉(しにく)が散乱
  3. ヒルやサソリ、ヘビがいたる所におり、に苦しめられる
  4. 一切の光がない、暗闇に閉じ込められる
  5. サトウキビのように身体を搾られる
  6. 炎の海や、煮えたぎる鍋などで、身体を焼かれる
  7. 焼けた柱に、くし刺しになる
  8. 剣や斧などで、身体を切り刻まれる
  9. を抜かれ、目玉をえぐり取られる

数え上げるときりがないほど、地獄があるようで、地獄では死ぬことはないので、延々と、こうした罰を与え続けられるということです。

4.地獄の抜け道?

ヒンドゥー社会では、地獄は恐れられているので、諸宗派の間では、地獄を回避するためには、「この宗派を信仰すれば大丈夫!」といったものもあります。

例えば、シヴァヴィシュヌを信仰する諸派でも、そうした信仰があり、本来、地獄行きの決まっていた罪人が、地獄を回避するために、地獄の王ヤマが、シヴァやヴィシュヌに向かって嘆く、といった描写もあります。

因果応報が、地獄の描写を生み出したのに対し、神への献身は、因果応報の鎖をも断ち切る大きな力になる、との考えです。

5.ナラカ:ヒンドゥー教の地獄のまとめ

今回は、ヒンドゥーの地獄についてみてきました。地獄の描写を読んだのですが、思ったよりもえぐいものが多くて驚かされました。

インド人の地獄描写に興味がある人は、ぜひ調べてみてください。食欲がなくなるかもしれません。

機会があれば、地獄にまつわるエピソードなども、もう少し紹介できればと思います。

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