インド外交:非同盟運動と現在

インド外交:非同盟運動と現在

非同盟運動というものをご存じでしょうか。私がこの言葉を知ったのは、インドの外交史の本を読んだ時のことでした。第2次大戦後、東西ブロックに分かれ、冷戦構造が著しくなっていく中、インド主導で作られたのが非同盟運動です。

今回は、この非同盟運動と現在のインド外交の方向性についてみていきます。

1.非同盟運動

第2次大戦後の冷戦の激化や、1950年に勃発した朝鮮戦争に対し、インドを中心としたアジア、アフリカ諸国は停戦を求めました。そして1953年、インドのネルー首相は、非同盟と軍事ブロックの反対を訴えます。これは冷戦時代の東西対立の中で、どちらか一方の軍事ブロックに属することなく、第三世界が中心となり、国際関係の緊張を緩和しようとしたものです。

これに賛同したエジプトのナセル大統領ユーゴスラビアのチトー大統領らによって、非同盟運動が積極的に呼びかけられます。そして1954年のコロンボ会議、55年のバンドン会議を経て、61年に第1回非同盟諸国首脳会議が開かれました。当初は25カ国の参加となっています。

ただ、この非同盟運動の参加国は、イデオロギーも異なり、諸問題の答えが対立することもままあったため、国際社会において一定の影響力はありましたが、決定的な役割を果たすことは少なかったといいます。

インドは非同盟運動の中で、常に中心的役割を果たしており、83年にはニューデリーで首脳会議が開催されています。

非同盟運動は、国際関係の緊張緩和に一定の影響力をもってきましたが、非同盟諸国会議の参加国同士の紛争(イラン・イラクなど)への解決能力や、ソ連への評価の対立など、課題も多くありました。

特に1980年代半ば以降、第三世界の多くが経済状況を悪化させ、政治的影響力も低下していきます。さらに1980年代末からの、ソ連や東欧の政治的な変動が激化し、冷戦が終結する中で、非同盟運動も転換期を迎えました。インドも1970年代以降、非同盟運動内で主導的な役割を担うことも少なくなっていきます。

2.冷戦後の非同盟運動

非同盟運動は、冷戦構造の緊張緩和を目的に形成されてきたため、冷戦終了後の活動理由が曖昧となってしまいました。そして、創設メンバーであったユーゴスラビアの解体を経て、、国連の年次総会で、非同盟運動の活動は停止されました。

その後、しばらくの間、公式のな非同盟としての活動は止まりますが、加盟国同士の協議は重ね、非同盟運動自身の存在理由の再定義をし、以下の問題を掲げました。イデオロギー問題、国家の独立の問題、領土問題、ポストコロニアル、多国間主義、相互非侵略などです。

冷戦後に新たな動きを始めた非同盟運動ですが、従来のように結束力は弱く、そのため影響力の向上には結びつかずにいるといえます。インドもこの非同盟運動に留まり続けていますが、70年代以降、軸足を非同盟運動からずらしていきます。

3.インドの非同盟運動と現在

インド外交は独立以降、非同盟主義を採用し、東西ブロックの対立に巻き込まれないように距離をとり、慎重な対応に徹してきました。

1962年、中印国境紛争で敗れて以来、中国を「最大の脅威」とし、常に警戒をしています。

しかし、モディ政権以前のインドの政権は、インド周辺国の中国による取り込みも、良く言えば「慎重」に対応し、悪く言えば「具体策なし」であったといえます。そのため、冷戦後急速に力を付けた中国の陣営に、パキスタンやネパール、スリランカなどが入ることを見過ごしてきたといえます。

従来のインドの外交は、世界を動かす影響のある強いものではなかったといってよいでしょう。

しかし、モディ政権下において、そうした流れは変わりつつあることが指摘されます。例えばインド政府は、今も混乱が続くアフガニスタンとイランを結ぶ港湾、鉄道計画を支援し、アフガニスタンに水力発電所を落成させるなど、近隣諸国にとって責任のある国であると示しています。

その他にも2015年、インド洋周辺国であるセーシェル、モーリシャス、スリランカと、インドはCSRS(Coastal Surveillance Radar Systems、沿岸監視レーダーシステム)の協定をインド主導のもと結びました。

インドは、海上安全保障のパートナーとして、フランスオーストラリアとの結びつきも強めています。中国のインド洋や南シナ海での覇権を、海事、国家安全保障、地域の経済的利益の脅威とみなす故に、共同歩調をとっています。また、オーストラリアにとり、インド洋は重要な貿易ルートであるため、インドとの関係を準同盟国として安全保障の結びつきを強化しています。

従来はインドの核保有を強硬に非難してきた欧米も、中国の脅威に対抗するため、インドを懐柔する目的もあり、その核保有を容認するようになっています。特に近年、アメリカとの結びつきは強くなっており、日米印の参加国共同軍事演習を、日中の領土問題のある尖閣諸島沖で行っています。モディ首相は、アメリカの議会での演説で、アメリカはインドの「必要不可欠なパートナー」であると述べています。

現在は日米豪印の4カ国でクアッドと呼ばれる安全保障の対話も始まり、中国の脅威に対応する枠組みが進められています。現段階では、米印軍事同盟が結ばれる可能性は低いといわれていますが、インドは中国の「一帯一路」に反発しており、今後の動静も注目されています。

4.インド外交:非同盟主義と現在

従来は外国との距離をとる外交を守ってきたインドですが、モディ政権以降、国力の増加、中国の台頭とともに、その姿勢に変化がみえます。人口総数も中国を抜くことがみえ、国内総生産(GDP)も近い将来日本を抜くといわれています。

近い将来、インド主導で強力な国際的な枠組みが誕生するのかもしれません。

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