多言語国家インドとその問題

多言語国家インドとその問題

インドには日本では想像もつかない数の言語が、国の言語として認定されています。インド政府は、文字すらも異なる多様な言語を、インドという枠組みの中で同化しようと試みていますが、一定の成果は出たもののまだまだ改善の余地はあります。

また、2010年から2013年の行われた調査では、公用語を中心とした教育による影響か、独立後に200言語の話者が消失したと報告しています。

今回はインドの多様な言語とそこから生じる問題を見てみたいと思います。

1.多言語国家インドの言語

2011年の国勢調査によると、121の言語が国の言語として認定されました。2001年の国勢調査では言語数は234とされていましたが、体系化をし、方言などと分類することで、大幅に言語としての数を減らしたようです。

国の公用語(中央行政府)はヒンディー語、準公用語は英語が定められています。

また、連邦憲法は第8附則により以下の22の言語を指定言語と定めています。

アッサム語、ベンガル語、ボド語、ドーグリー語、グジャラート語、、カンナダ語、カシミール語、コーンカニー語、マイティリー語、、マニプル語、マラーティー語、ネパール語、オリヤー語、パンジャーブ語、サンスクリット語、サンタル語、シンド語、タミル語、テルグ語、ウルドゥー語

2011年の国勢調査によると、最大の話者数を誇るヒンディー語の話者は約6.15億人で57.1%、その次のベンガル語約2.65億人で8.9%となっているので、ヒンディー語の重要度をみてとれます。

英語は約1.25億人で約10%の話者がいるといわれています。

古代において使われていたサンスクリット語も公用語に入っていますが、話者は500万人で全体の割合は0.01%ととなっています。

2.州ごとの公用語

インドでは州ごとに公用語が決められています。

公用語は次の18の言語があり()内が公用語に指定してる州です。

  1. アッサム語(アッサム州)
  2. ウルドゥー語(ジャム・カシミール州)
  3. 英語(アルナーチャル・プラデーシュ州、アッサム州、ナガランド州、西ベンガル州、メーガーラヤ州)
  4. オリヤー語(オリッサ州)
  5. カンナダ語(カルナータカ州)
  6. グジャラート語(グジャラート州)
  7. コク・ボロック語(トリプラ州)
  8. コンカニ語(ゴア州)
  9. タミル語(タミル・ナドゥ州)
  10. テルグ語(アンドラ・プラデーシュ州、テランガーナ州)
  11. ネパール語(シッキム州)
  12. パンジャーブ語(パンジャーブ州)
  13. ヒンディー語(ハリヤーナー州、ジャールカンド州、マディヤ・プラデーシュ州、チャッティースガル州ウッタル・プラデーシュ州、ウッタラーカンド州、ヒマーチャル・プラデーシュ州、ラージャスタン州、ビハール州)
  14. ベンガル語(西ベンガル州、トリプラ州)
  15. マラーティ語(マハーラーシュトラ州)
  16. マラヤーラム語(ケーララ州)
  17. ミゾ語(ミゾラム州)
  18. メイテイ語(マニプル州)

独立後、インドの州再編は地理的特性ではなく、同一言語を使っている地域を中心に行われたため、言語州とも呼ばれています。

ただ、インド東北部諸州のように、優越した言語のない、複数の地域言語が流通している地域もあります。

3.言語と教育

インドで教育を受けているヒンディー語圏外の州の多くは、初等・中等教育で州の公用語、英語、ヒンディー語の3言語が必修で、高等教育からは多くが英語での授業を受けることになります。

ヒンディー語圏の州は英語とヒンディー語の2言語が必修となります。

こうした教育を多くのインド人が受けるため、3言語以上を話せるインド人がかなりの数いるといいます。私のインド人の友人もヒンディー語、英語、ベンガル語、マラーティー語、パンジャーブ語を話せると言っていました。

このように、ヒンディー語圏外のエリアの人々は3言語を必修とされるため、1言語多く覚える必要があり、不公平感から不満を感じている人も多いといいます。

4.言語問題

インドの言語問題で最も挙げられるのが、地域間の言語が異なることによる意思疎通の団結の難しさです。

インド政府は独立後、1965年まで英語を主たる連邦公用語とし、ヒンディー語は2番手の地位としていましたが、それ以降公の場での英語の使用を徐々に減らしていき、ヒンディー語に交代させる方針を取りました。そのために制定されたのが「1963年公用語法」です。

1965年に発効し、ヒンディー語は文字通り単一の連邦公用語となりましたが、ヒンディー語が広まっていない南インドでは激しい抗議運動がおこり、政治的に不安定になりました。その沈静化のために67年に公用語法を改正し、以降、英語の併用を確認することになったのです。こうした経緯から、各州の指定の言語と英語、ヒンディー語が初等・中等教育で教えられることになったようです。

しかし、タミル・ナドゥー州はいまだに法的根拠がないと反発し、ヒンディー語を学校で教えずに、英語とタミル語の授業をしています。こうした反発がある一方でヒンディー語話者の割合は増え、全体の57%に達し、一定の成果を上げています。

しかし、このような1つのインドとしての結束力を高めるためのヒンディー語推進は、少数民族の言語の消失という負の側面も引き起こしています。2010年から2013年の調査によると、インド独立後、200の言語が、誰も使わなくなったことで消失したという事です。

貧困層の多い部族民などは、そうした状況から抜け出すために教育が必須だといわれており、部族特有の言語でなく、州の公用語で授業を受けることになります。この教育により仕事などの機会を得、インド社会に溶け込む人々が増えてきた一方で、もともと使っていたかれら固有の言語が使われず、忘れられた言語もあったようです。

5.多言語国家インドとその問題のまとめ

私が主に住んでいたデリーでは、多くの他州からの出稼ぎ労働者を見てきました。私の感覚だと、やはりここで紹介したヒンディー語圏の州からの人が多かったように思います。家のメイドウッタル・プラデーシュ州出身でした。

ヒンディー語圏で暮らす人は、他州への出稼ぎも比較的容易ですが、マイナー言語のエリアで暮らし、教育もあまり受けられなかった人は、その狭いエリアの中で一生を終えなくてはならないという地域格差があります。単一言語の日本では、考えたことのない多言語の巨大な国、インドならではの問題なのだと思わされます。

外人の私からすると、全インドで英語は通じるので特に困ることはありませんでしたが、今回みたような事情から、それぞれの地域で暮らすインド人、特にヒンディー語圏外のインド人は言語の不公平感は強く感じられます。機会はヒンディー語話者や英語話者に多く与えられるからです。

人口12億人を超え、州ごとに公用語が異なるインド。多様な文化をディープに体験するために、以前挫折したヒンディー語をもう一度、勉強しなおそうかなと思いました。

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