土着の信仰との融合にみるヒンドゥーの神々

土着の信仰との融合にみるヒンドゥーの神々

ヒンドゥー教には、様々な神様がいることは知られていますが、現在も広く信仰されている神々が、どういった背景で勢力を伸ばしてきたのかは、意外と知られていません。

今回は、現在のヒンドゥー教の2大宗派といわれている、シヴァ派が、広く民衆に受け入れられていったきっかけの一つの要素をみていきます。

ヒンドゥーの神々と、土着の信仰との融合に注目します。

1.ヒンドゥーの神々

ヒンドゥーの神話には、宇宙の創造や人類の始祖、神々と悪鬼との戦いなど、様々なものがあります。

ヴェーダ時代(BC1500-BC500年頃)のヒンドゥーの信仰は、自然現象を擬人化した神々を対象とし、祭祀が中心のものでした。火の神アグニや、天候・雷の神インドラなどが、ヴェーダ時代に人気の神でしたが、時代の変遷とともに、人気を集める神々も変わっていきます。

そして、ヴェーダ時代が終わる頃、宗教観はより高度に発達していき、インド哲学の世界を作っていくことになります。従来の祭祀中心の信仰から、ヒンドゥー教における最高神最高原理というものを追求する、ムーブメントが起きます。

また、自由な宗教的探求は、仏教やジャイナ教など、幅広い思想を展開し、拡がりを見せることにもなりました。様々な信仰が現れましたが、ヒンドゥー教は新たに生まれた思想・信仰を柔軟に取り入れることで、より複雑な宗教理念を構築していきました。

ヒンドゥー教には、地域ごとに様々な神がいますが、その多くが、土着の民間信仰の対象だった神が、ヒンドゥー教と融合していったのです。

土着の神と結びついたことで、急速に人気を得た神がいます。ヴィシュヌとシヴァがその代表で、現在においても、ヒンドゥー2大宗派といわれています。

2.

ヴィシュヌ神は、ヒンドゥー教の主神の一つで、『リグ・ヴェーダ』から登場しますが、ヴェーダの時代は、人気の神ではありませんでした。ちなみに『リグ・ヴェーダ』の、ヴィシュヌに関する神話で有名なのは、地上から神々の暮らす天界まで、3歩で踏破(とうは)したというものです。

当初は、太陽の光が神格化されたと考えられていましたが、その後、の役割も担うようになります。

  • ヴィシュヌは4本の腕をもち、それぞれの腕で、チャクラと呼ばれる円盤状の武器、ほら貝、こん棒、蓮華(れんげ)をもち、霊鳥ガルダに載って活躍しますが、世界が滅んだのちは、次の世界の創造の時までの間、大海にいる蛇王の上で眠っているといわれます。
  • ヴィシュヌは、民間・土着の神々と結びつき、その神々を自身の化身とすることで融合し、信者を増やしていきました。代表的な化身は、魚・亀・猪・人獅子・矮人(わいじん)・『』の主人公ラーマ・クリシュナ終末の救世主カルキなどがあります。カルキは、世界が退廃したカリ・ユガ(終末)期に現れ、世界を救うと考えられています。
  • ヴィシュヌは、世界が危機に瀕するたびに、こうした化身の姿を借りて、世界に現れ、人類を救済します。

仏教はヒンドゥーの一派と考えるヒンドゥー教徒が数多くおり、仏陀も化身の一つとして組み込まれています。仏陀がヴィシュヌの化身となった理由としては、『ヴェーダ聖典』へと集まる邪悪な人々を遠ざけるために、ヴィシュヌが仏陀として転生し、仏教を広めたということです。

もちろん、仏教徒はこれを否定しています。

3.シヴァ神

ヴィシュヌ神と勢力を2分するシヴァ神は、もともとは暴風の神でしたが、民間信仰と融合して、破壊と再生を司る最高神へと変化しました。シヴァは、荒ぶる性格をもち、蓬髪(ほうはつ:伸びて乱れた髪)を首に巻き付け、三叉の戟(げき)を携えた姿で描かれます。

シヴァ神の寺院には、そのほとんどで、男根の形をした石が祀られており、これを「リンガ」といいます。これは、豊穣や多産の象徴のみならず、シヴァ神の神威そのもので、宇宙の真理を啓示するものと考えられています。

また、シヴァ神の妻として人気の女神は、献身的な愛を捧げるサティーパールヴァティ―、血を好み好戦的なドゥルガーカーリーなどがいます。

これら女神たちは、先住民の土着の神で、シヴァの妻として取り込むことで、シヴァへの信仰が拡大することになりました。

また同様に、ガネーシャ(象の頭に人の身体をもつ神)も、シヴァの息子として取り込まれています

4.土着の信仰との融合にみるヒンドゥーの神々のまとめ

ヒンドゥー教には、各宗派ごとに最高神がいると考えられています。ヴィシュヌ派にとってはヴィシュヌが最高神であり、シヴァ派にとってはシヴァが最高神で、創造を司ります。これは、多神教でありながら、最高神をおく一神教的な性格も備えており、ヒンドゥー教の面白い特色となっています。

また、シヴァ派でも、信仰は様々あります。リンガを信仰する宗派もあれば、「踊りの王」ナタラージャとしてのシヴァを信仰の対象とする宗派など、こうした信仰は、土着の信仰と結びついたものが多いため、地域ごとに様々な顔をみることができるようです。

ヒンドゥー教は奥が深いです。また興味深いエピソードがあれば、ヒンドゥー教に関する記事を書いてみたいと思います。

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