仏教:その思想と展開の歴史

仏教:その思想と展開の歴史

仏教の起源がインドにあることは、ご存知だと思います。ただ、仏教思想は難解なものが多く、とっつきにくいと感じている人は多いのではないでしょうか。

今回は、仏教の基本思想から、展開の歴史を簡単に紹介します。

1.ブッダ

ブッダはサンスクリット語で「心理に目覚めた者」を意味します。漢語では仏陀、仏、意訳では覚者といいます。

ブッダは、BC6-BC5世紀頃、新しい宗教思想をもつ者たちがガンジス川中流域に現れ、バラモンの権威を否定し、自由な思索を展開しました。ブッダはかれらの間で、修行を完遂した者という意味で用いられた呼称です。

当初、ブッダは仏教徒にのみに用いられる語ではありませんでしたが、その後の時代の流れとともに、仏教における修行完遂者のみに使われるようになります。

2.開祖:ブッダ

仏教の開祖であるブッダの名前は、ゴータマ・シッダールタ(Gotama Siddhartha)といい、生存年代はBC560-BC480頃とBC460-BC380頃の2説あり、確定していません。

現在のヴァラナシ地方に、半独立国を形成していたシャーキャ(釈迦)族の王族出身で、領内のルンビニで生まれました。ブッダを釈迦や釈尊と呼ぶのも、シャーキャ族に由来するものです。

29歳の時、ゴータマは人生の苦難の解決を求めて出家し、35歳の時に、ブッダガヤの菩提樹の下で悟りを開き、ブッダとなりました。

その後、ヴァラナシ北部サールナートで最初の布教活動を行い、80歳で死ぬまで各地を周り、布教の人生を送りました。

3.仏教の基本的思想

仏教の基本思想は「四諦」という、4つの実践的真理によって表されます。

①苦諦

苦諦は、苦しみについての真理を意味します。

現実世界で生きることは、輪廻の状態を含め、すべてが無常ゆえに、多種多様の苦しみがあふれていると確認する思想です。

②集諦

集諦は、苦しみが起こる原因や過程の真理を意味します。

苦しみは、人間の生存への執着根源的無知が原因とする思想です。

③滅諦

滅諦は、苦しみの消滅についての真理を意味します。

執着や無知から解放され、輪廻から解放された解脱の状態です。

④道諦

道諦は、苦しみの消滅への実践の真理を意味します。

苦しみのない理想を目指して、八正道を実践することを推奨します。

八正道は、

  1. 正しい知覚の「正見」
  2. 正しい思考の「正思」
  3. 正しい言語の「正語」
  4. 正しい行為の「正業」
  5. 正しい生活態度の「正命」
  6. 正しい努力の「正精進」
  7. 正しい注意力の「正念」
  8. 正しい瞑想の「正定」

です。

諸行無常や一切皆苦、諸法無我、涅槃寂静などの仏教思想も、四諦に入ります。

仏教は、現実の苦しみの解消・解決を意味する涅槃・解脱と、それを目指す実践のために、宗教理論を深化、拡大しました。

4.仏教の歴史

仏教はインドの歴史において、さまざまな宗教思想・哲学との交流を常に行い、インドの思想史・宗教史において、極めて重要な位置にいるといえます。

インドでは、仏教が中世以降広まることはありませんでしたが、その思想が広まり、受け入れられた中央アジア、東アジア、東南アジア地域において、それぞれの文化に影響を与えています。

ここでは仏教の展開の過程をみていきましょう。

4-1.初期仏教

悟りを開いたゴータマは、ブッダとして、現実的な生存の苦しみを解消・解決するための、実践的な真理を説きました。ゴータマによる教化によって、出家者、在家者からなる仏教が成立し、四諦を中心とした思想(法)と生活の規律(律)が整備されます。

仏教は仏による「」を中心に展開される宗教であり、それを実践するのが仏教徒(僧)です。仏教は初期段階において、形式的な祭祀中心のバラモン主義・ヒンドゥー教に批判的姿勢をとっています。

弟子はゴータマと同様の悟りを共有し、ゴータマの死後、その教えを経典としてまとめ、教団の維持拡大が進められました。

4-2.部派仏教

BC3世紀頃、マウリヤ朝のアショーカ王によって、仏教はインド広範に広まります。それに伴い、仏教の地域ごとの相違、地域特性から「部派(ニカーヤ)」を生み、分裂をはじめました。各部派が独自の「法」と「律」を体系化していき、その過程において、各部派間で宗教・哲学的議論が活発に行われることで、相互に影響し合い広まっていきました。

そうした過程で生まれたアビダルマは、仏教の知識を体系化したもので、その後の仏教文化に大きな影響を与えていきます。

4-3.初期大乗仏教

インドで広まった仏教は、各地で分裂し、BC1世紀頃、仏教の改革運動が起きます。この運動は新しい仏教を「大乗」と呼び、旧来の仏教を「」と呼び、批判の対象としました。

大乗仏教は、新しい法の形を形成していき、さまざまな分派と離合集散を繰り返しながら、その思想を固めていきます。各大乗仏教の教団は、般若経華厳経をはじめとした経を編纂し、実践的な悟りを求める方法を展開していきます。

4-4.中期大乗仏教

AD2世紀頃、バラバラだった大乗仏教各教団は、共同意識をもち始めます。

すべてのものは固定した実体性を欠き、執着の対象にはなりえないとする「」の思想を展開し、その思想を前提とした唯識思想(すべてのものはただ認識過程に過ぎないとする思想)と主体的現実を、修行体系として構築していきました。

こうした思想は、他の仏教諸派に多大な影響を与えていくことになります。

4-5.後期大乗仏教

AD7世紀頃、大乗仏教が独自の展開をした背後、・タントリズム(神秘主義)の影響力が増していました。その流行に乗る形で、大乗仏教の教法である「密教」が発達します。密教は、現実の煩悩や迷いの世界と理想的な悟りの世界とを、多様な宗教的シンボルで結びつけ、神秘的な実践を説きます。

この時期の仏教は、ヒンドゥー教の要素も取り入れた体系化を進めています。

12世紀以降、イスラム勢力による仏教の拠点の破壊がされはじめ、出家者はチベットへと逃れ、在家者はヒンドゥーの中に吸収されていきました。これ以降は、仏教はインド国外で展開していくことになります。

ただ、例外的に東ベンガルには仏教徒がおり、「仏教徒カースト」として現在まで残っています。

4-6.現在の仏教

20世紀に入り、インドの仏教復興運動が起こります。

不可触民カースト出身の指導者、アンベードカルは、上座部仏教に依拠した被差別民の解放を目指す、ネオ・ブッディスト運動を展開し、1956年に開かれた集会で30~50万人の仏教への改宗者を出しました。

他方、ダライ・ラマは、1959年のインド亡命以降、インド各地を布教で周っています。

最新の国勢調査(2011年)では、仏教人口は約840万人となっています。

5.仏教のまとめ

仏教の思想には哲学的なものが多く、正直、理解は難しいです。大乗仏教後期に入ると、インド最難関の哲学思想といわれるタントリズムの思想を取り入れたため、より難解なものとなってしまいました。

出家している仏教徒の友人も「自分も含めて、仏教哲学なんて難しくて理解している人は少ない」と話していました。当時は「生臭坊主だから」と思っていましたが、インド哲学の専門書を読むと、その難解さに息を飲んでしまいます。興味のある方がいたら、ぜひ挑戦してみてください。

個人的には、仏教の歴史の中でも特に興味深いのは、独立後に展開されたネオ・ブッディズム運動です。不可触民解放を目指すアンベードカルが、ヒンドゥー社会への諦めの上、ようやく辿り着いた答えが、仏教への改宗でした

引き続き、アンベードカルの活動を通して、この運動を紹介します。

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あれほど豊かだったインドの緑が、今では国土の5分の1しか残っていません。
マハールを含めた不可触民に、伝統的に課されている制約があります。