ガンジス川③:環境汚染対策

ガンジス川③:環境汚染対策

前回の記事「ガンジス川②:汚染と環境破壊」でもみましたが、ガンジス川の汚染は大変深刻なレベルになっています。バラナシに行ったことがある人は、その汚染された川を見て、これが聖なる川か、と驚いたのではないでしょうか。

今回の記事はガンジス川の汚染の軽減、浄化に向けた動きを見ていきます。

1.ガンジス川の汚染対策と課題

ガンジス川の汚染対策の課題はさまざまな専門家が指摘しており、大まかに以下のものが挙げられています。

①川の水の希釈

ガンジス川の重度汚染は希釈で軽減出来るといわれています。そのため、他の水源から水を引くことで、汚染を軽減させられると想定されます。

しかし綿密な計画なしに、他の水源からガンジス川に水を引くと、本来その水源に頼っていた地域に水が供給されず、干ばつを誘発するなど新たな問題を引き起こしてしまいます。

②産業排水・廃棄物の環境基準の強化と徹底化

法令では公害対策から産業排水に規制がありますが、厳しい規制は経済発展の足かせとなるため、実際にはその規制は緩く用いられており、取締りも機能していません。

この産業排水はガンジス川の重金属汚染の濃度を引き上げることに繋がっており、とりわけ体内に蓄積される水銀が懸念されています。

③下水処理施設の建設

ガンジス川には処理されていない下水が流されているため、基準値を大きく超える大腸菌が検出されています。

下水処理施設の建設が求められていますが、その範囲は広大で、下水道も古く、整備が進んでいないのが現状です。

④宗教儀式の規制

ガンジス川流域では、1年を通してさまざまな宗教儀式が行われています。そのゴミ、遺灰などがそのまま川に流されているため、汚染の原因となっています。

宗教儀礼への規制も考えられていますが、現政権のBJPはヒンドゥー教の儀礼を大事にする傾向があるため、支持者からの反発の大きさを考えると実効は厳しいでしょう。

⑤ダム計画の見直し、改修

現状のダムは、都市部の水を優先する傾向にあり、ダムの乱開発による地滑りやダム周辺エリアの想定外の浸水、または下流域の干ばつなど被害が報告されています。

十分な計画を練った上で、環境被害の出にくい適切な開発の必要性が訴えられています。こうした被害地域の改善のため、ダムの改修や計画の見直しをする必要があります。

⑥都市計画の見直し

現在のインド都市部は道が狭く、重機が入れないエリアが多数あるため、下水道をはじめとしたインフラの整備が進められないという問題が起こっています。下水処理の整備には、都市計画の見直しが必要になっています。

地域ごとに複雑な問題が絡み合っており、ガンジス川の浄化の道は険しくなっています。

次の項からは、ガンジス川の浄化に対する官民の取り組みや展望を見ていきたいと思います。

2.Namami Gange Program

ガンジス川に敬意を」を意味するこのNamami Gange Programは、2014年に政府のプロジェクトとして発表されました。

Namami Gange Programの主なプランは、次のものとなっています。

  • 下水処理インフラ
  • 河川の開発
  • 河川の清掃
  • 生物多様性の維持
  • 植林
  • 公共の利益
  • 産業排水の監視
  • 農村部・郊外の開発

こうした分野を長期的スパンで、解決に向けた開発を進めていくとしています。この計画の一環として、政府はガンジス川周辺にある48の工業団地の閉鎖を命じています。

従来行われてきたガンジス川の対策は、散漫な対策であったとし、汚染のホットスポットを定め、その地域を中心とした対策を練っています。このプロジェクト下のプランには政府が100%の出資をし、援助をすると発表しています。

このプロジェクトでは3億ドルを超える予算が付けられ、ガンジス川の汚染軽減や浄化再生を目指しています。2016年から下水処理の対策に取り組み、2022年までに処理施設の稼働を目指しています。都市部に適切な下水設備を配置し、汚水を遮断、流入の防止による汚染防止をするとのことです。

また、現在の環境法の強制力を高めるため、各省庁間の調整のメカニズム改善に力点を置かれ、主要なインフラ投資(都市開発、衛生、飲料水、環境対策など)の推進を図っています。

このプロジェクトは雇用を生み、ガンジス川流域の人々の健康的生活の確保に繋がると想定されています。

3.Ganga Manthan

2014年7月、ガンジス川の汚染問題の協議ためにGanga Manthanというプラットフォームが作られ、省庁や私企業、大学、研究者などさまざまな利害関係者が、実行可能なガンジス川再生計画の展望を話し合いました。

この協議体は環境森林省(MoEF)支援のもと、National Mission for Clean Ganga(NMCG)が主催しています。

さまざまな提案がされていますが、今回はガンジス川の汚染の希釈のために提案された案をみてみます。

①ネパールとの河川共有協定

ガンジス川上流域にあるネパールと、川の水を共有の資産とすることを目指します。そうすることで、多くのダムや堰(せき)をもつネパールによる独善的な運用を止めさせ、利用できる水量を増やすことを考えています。

しかし、インドにとっては独善的に思えるネパールのダム運用も、ネパールにとっては重要な水源のため、この交渉は難航が予想されています。

②マーナサローバル湖からの分水

世界で最も高所にあるマーナサローバル湖(中国領)の水を、ガンジス川の支流を経由することで、ガンジス川に分水できるといいます。

この案は、河川沿いに水力発電所を作ることで、電力不足に悩む3国への電力供給を可能にするため、3各国の協力が可能ではないかとみています。

③ガンジス・ブラマプトラ(Brahmaptra)川の引き起こす洪水の利用

、ブラマプトラ川下流域の西ベンガル州、オデッサ州、バングラデシュでは、毎年洪水の被害に遭っています。

この洪水が発生するエリアに隣接する浅い海域に、20mの堤防を作ることで、毎年発生するガンジス川、ブラマプトラ川の洪水の水を貯め、パイプラインを引くことでデリーまで水を送ることが可能だとしています。

また、この海沿いに貯められる水は淡水化することが可能なため、環境への問題はないと考えられています。設置したパイプラインの安定的な稼働のため、河川沿いに小型水力発電所や揚水発電所を設置することで、電力を安定供給できると想定しています。

豊富な水量を確保することは、汚染されている川の希釈、生活用水、農業用水の確保にも繋がります。このプロジェクトは大規模なもので、ガンジス川流域に多くの雇用を生み、周辺地域の経済的成長も伴うと考えられています。

①と②は他国との複雑な交渉が必要となるため、政府の本格的な動きが必須となっています。

③はインド国内で完結するプロジェクトであり、開発も伴うため海外からの投資も期待できると話されていますが、その膨大な量の水をデリーまで送るパイプラインを作ることは可能なのか、さらなる議論に期待したいです。

4.ガンジス川③:環境汚染対策のまとめ

みてきたように、ガンジス川の汚染に対する対策は、さまざま考えられています。が、効果的な対策の実行報告は上がっていません。

今回は取り上げていませんが2014年にモディ首相が来日した際に、京都・バラナシパートナー協定が結ばれ、京都大学に研究チームを作り、ガンジス川浄化のための研究が行われています。

また、バラナシの京都化を目指すという宣言もされています。

その他にもさまざまな海外の大学とプロジェクトを組み、汚染対策の研究が進められています。どの案が実行されるのかはわかりませんが、ガンジス川の浄化実現に期待したいです。

BlogMuraFC2BlogRanking

VISITORS HERE:2,442, HOLI GREEN TOTAL VIEWS : 1,192,575

Previous(down)/ Next(up)
インドに行く際は予防接種を受ける人も多いと思います。主だったものではA型肝炎、腸チフス、狂犬病などの…
ガンジス川の聖地、ヴァラナシに行ったことがある人も多いと思います。そこでまさか沐浴までしたという人は…