ヒンドゥー教の5つの大罪

ヒンドゥー教の5つの大罪

今回、紹介するテーマは「ヒンドゥー教の5つの大罪」です。キリスト教の7つの大罪にあたるような、宗教規範を著しく侵す行為とは、どういったものなのでしょうか。

ヒンドゥー教における罪や、その種類の説明を簡単にした後、5つの大罪とはどういったものなのか、みていきます。

1.ヒンドゥー教の罪

ヒンドゥー教は、「浄・不浄」の観念が極めて発達した宗教といわれており、カースト制度のヒエラルキーも、カーストごとの浄・不浄の基準によって、順位づけられています。そして、ヒンドゥー教における「罪」とは、不浄性に侵されることと考えられています。

一般的に、不浄とされるもの(体液や死、誕など)に触れること、見ることで、またはヒンドゥー教の規範を破ることで、不浄性は自身の身体に宿ることとなります。

ヒンドゥーでは、これを「罪」といい、一般的な「罪」の場合、身を浄める贖罪の儀式を行うことで、浄性を取り戻すことができます。

あまりにこの「罪」を繰り返したり、「大罪」を犯すと、コミュニティから追放されてしまいます。これは、同カースト内に「不浄な存在」を抱えることは、カースト全体が不浄性を帯びてしまう恐れがあり、ヒエラルキーの低下を招くことへの対処ということです。

こうした規範は、カースト制度をはじめとしたヒンドゥー教の規範を、現在まで継続させた、大きな要因と考えられています。

2.ヒンドゥーの罪の種類

ヒンドゥー教の最高規範に位置づけられている『マヌ法典』において、「」は次の6つに分けられています。6つの罪の分類と、具体的な罪とはどういったものか、みていきます。

①大罪(マハー・パータカ)

  • バラモン殺し
  • 供儀(くぎ)をしているヴァイシャ・クシャトリヤ殺し
  • 最下層の女と交わる
  • 上位カースト詐称する
  • 裁判での詐称
  • ヴェーダを放棄・非難する
  • 師への反抗

②準大罪(ウパ・パータカ)

  • クシャトリヤ・ヴァイシャ・シュードラ殺し
  • 牛殺し
  • 金貸しをする
  • 妻に生計を頼る
  • 日々のヴェーダの独唱を放棄する
  • 師を見捨てる
  • 弟が先に結婚することを兄が認める

③身分を喪失させる罪(ジャーティ・ブランシャカ)

  • 酒の臭いを嗅ぐ
  • 男と交わる
  • 詐欺

④混血身分に落とす罪(サンカリー・カラナ)

  • ウマ・シカ・ゾウ・ヤギ・ヒツジ・魚・ヘビ・水牛を殺す

⑤贈物の受け取りを不適にする罪(アパートリー・カラナ)

  • 忌避されている人間から贈り物を受け取る
  • 禁止されている商いをする
  • シュードラに仕える

⑥不浄にする罪(マラ・アーヴァハ)

  • 虫・鳥を殺す
  • 酒に触れた食べ物を食す
  • 果実・花の窃盗
  • をつく

①-④は、罪の重い順となっており、「大罪」が一番重いもので、⑤と⑥は比較的軽微な罪です。

④の「混血身分」は、カースト間の混血を表します。ヒンドゥー社会では、異カースト間の結婚が嫌われているため、その地位に身を落とすということです。

ただ、具体的に、これら罪の贖罪法の規則性はみられないようです(窃盗罪なら〇〇をすることで贖罪となるというような、型が決まっていおらず、その時によって贖罪方法が変わります)。地域、コミュニティ、カーストごとに、贖罪法は変わります。

3.ヒンドゥーの「5つの大罪」

3-1.ヒンドゥーの「5つの大罪」

ここでは、古来より、ヒンドゥーで最も罪が重いとされる「5つの大罪」ついて紹介します。この「5つの大罪」は、ヒンドゥーの歴史の中で、常に、最も、忌避されてきた「」です。

  1. バラモン殺し(ブラフマ・ハティヤー、ブラフマ・ハン、ブルーナ・ハン)
  2. スラー酒(穀粒、糖蜜、蜂蜜、マドゥーカ花などを原料とする酒で、悪る酔いするとされている酒)を飲む(スラー・パーナ)
  3. 黄金泥棒(ステーナ)
  4. 師の妻との姦淫(グル・アンガナーガマ)
  5. 以上4つの大罪を犯したものと交際すること

これらの中で、もっとも古くから古典の中で触れられているのは「スラー酒を飲む」罪で、『マヌ法典』以前に編纂されている『』の中にも、忌むべき行為として記されています。

ヒンドゥー社会の規範を作ってきた「法(ダルマ・シャーストラ)」の中で、「5つの大罪」が、何故にヒンドゥーにおける最悪の罪とされたのかは、記されていないといいます。しかし、この「5つの大罪」に疑義を呈するような記述の一切が、古代から現在においてもみられないことから、ヒンドゥー社会の共通認識といえるということです。

  • ①のバラモン殺しは、時代とともに、バラモンの中でも祭祀に携わるような、神聖なバラモンにのみ該当するようになり、町のコックのようなバラモンには、該当しなくなったということです。
  • ③は、古来より窃盗が大罪と考えられ、その取り締まりが王の責務と考えられてきたことに起因しています。しかし、ただの窃盗を大罪とするのは厳しすぎるとの考えが広まったため、「黄金泥棒」に限定されたということです。

そして時代とともに、この「黄金泥棒」も、「バラモンの黄金」を盗むことに限定されることになります(『マヌ法典』では漠然と「黄金泥棒」が大罪とされています)。

3-2.大罪への贖罪

こうした大罪には、様々な贖罪方法が『マヌ法典』に記されています。いくつか、面白いものを紹介します。

①バラモン殺しの贖罪方法

  • 火の中に3度、頭から飛び込む
  • バラモンやのために、命を捨てる
  • 全財産を、ヴェーダに精通するバラモンに与える

②スラー酒を飲んだことへの贖罪

  • 故意にスラー酒を飲んだ場合、火の色に熱したスラー酒を飲む
  • 火の色に熱した牛の尿、牛糞液を、死ぬまで飲む

③黄金泥棒をしたことへの贖罪

  • バラモンがこの罪を犯した場合、王のもとに出向き、赦しを乞い、棒で殴られ、殺されることで清められる
  • 森で樹皮をまとい、12年間の苦行を行う

④師の妻との姦淫(かんいん)をしたことへの贖罪

  • 燃え立ち、熱された女神像を抱きながら死ぬことで、清められる
  • 自ら、男根と睾丸を引き抜いて、両手に持ち、西南に向けて倒れるまで歩き、死ぬことで清められる

⑤の、以上4つの大罪を犯したものと交際すること、に対しては、①~④の大罪への贖罪に準ずる行為が、行われます。

4.ヒンドゥー教の5つの大罪のまとめ

今回は、インドで広く知られているヒンドゥーの「5つの大罪」を中心に書きましたが、大罪への贖罪が、えげつないものが多くて、興味を惹かれます。まだまだすごい贖罪方法が、インドの歴史の中には眠っていそうだと思ってしまいます。

今回、久しぶりに『マヌ法典』に目を通してみましたが、差別的な文言もたくさんあり、改めて、インド文化の奥深さを感じました。また、興味深いテーマがあれば、紹介させていただきたいと思います。

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