2020年6月中印国境の衝突:中国軍による釘バット奇襲!?

2020年6月中印国境の衝突:中国軍による釘バット奇襲!?

今年6月に起こった、カシミール地方で起きた、中印国境地帯での衝突は、世界的に注目されたニュースでした。インドでも、ナショナリズムに火がつき、反中感情が、急速に高まるきっかけとなった事件といえます。

今回は、独立後のインドと、中国の間で続いている、国境問題を解説したのち、現在あがっている情報をもとに、6月の衝突について紹介します。

1.中印国境問題

中国とインドの間には、世界の尾根ともいわれるヒマラヤ山脈カラコルム山脈が、東西約3200㎞にわたり、連なっています。

そしてこの地域が、本来、両国間の国境線となるはずですが、現在においても、それは定められていません。

両国の主張する国境線の位置が、異なるためです。

1-1.インドの主張

インドの考える国境線は、イギリスがインド植民地時代、武力により設定した当時の国境・境界線で、インド独立後も、その効力は続いているとしています。

このラインは、1914年当時、イギリスとチベット政府の間で定められたもの(マクマホン・ライン)で、当時から、中国(中華民国)との合意は得られていません。

インド共和国は、「イギリス領インド帝国」の正統な後継者であるとのロジックで、この国境線を継承しています。

1-2.中国の主張

中国の考える国境線は、2つの山脈の南麓(なんろく)を基準に定めるべし、というものです。当然、植民地時代に定められた、インドの国境線を認めていません。

現在、中国は、第2次大戦後にチベットを接収し、中印国境紛争後、ヒマラヤ山脈の北麓(ほくろく)を、支配下に置ています。

中國の主張としては、中印国境紛争で得た領地で終わりでなく、本来の領有権は、さらに南の地域まであるということで、当然、インドとの対立は継続しています。

1-3.国境問題

こうして、インドと中国は、互いの国境線を妥協することなく主張し、たびたび、衝突が起きることになります。両国の紛争は、1950年から始まり、事態収拾のため1960年4月、ニューデリーでネルー・周恩来の会談が開かれ、友好的な解決を目指すことで、合意しました。

しかし、1962年10月から12月にかけて、中国による、インドの定めた国境線への侵入により、軍事衝突(中印国境紛争)が発生し、国交断絶にまで至ります。

その後もしばしば、国境付近での、被害の小さい衝突が続きますが、70年代以降、両国の間で和解ムードが醸成され、1988年のラジーヴ・ガンディー訪中の際に、国境問題に関する、共同の調査グループが作られています。

ただ、その後もしばしば、衝突は起き、2020年6月の衝突もその1つです。

なお、この国境線付近での重火器の使用は、大きな戦争へとつながる恐れがあることから、お互いに自重(じちょう)することとなっています。

2.2020年6月の中印軍事衝突とその要因

2020年6月15~16日にかけて、ラダック東部で、インド軍は中国軍から攻撃を受け、20人が殺害されています。

この時の中国側の武器は、釘バット(Nail-Studded Iron Rods)やで、物陰に潜んで奇襲してきたと、インド側からの情報があります。

  • この攻撃を受け、インド側は将兵4人を含む、計10人が拘束されました(18日に解放)。
  • インド側は、この衝突の際、中国43人が死亡したとしていますが、中国側は否定しています。

なお、インド側はこの衝突を、中印国境紛争以降で、最悪の衝突と表現しています。

この中国が仕掛けた衝突の原因は次のことなどが指摘されています。

①サラミスライス戦略

サラミ・スライス」という、中国の用いる領土侵犯の手法があります。これは、少しずつ少しずつ、その瞬間は僅かであっても、時間をかけて侵犯していく地域を広め、その施政権を拡大していくという手法です。

これは、日本の尖閣沖でも、現在、行われているといわれます。

今回、衝突のあったラダックでも、中国軍は衝突の後に、道路などを作り、自身の施政権下にあることをアピールしています。

②インド側のラダックのインフラ開発への反応

インドはラダック地方において、インフラ整備に力を入れ、中印境界線との補給線等の、スムース化を測っているとみられました。中国側はこの開発を、インドの「裏切り」と判断し、報復に出たということです。

この他にも、新型コロナの対応をめぐる、中国国内の不満をそらすためというものや、アメリカの主導する、安全保障の「インド太平洋構想」への、インドの動きを抑制するためなど、様々な要因が憶測されています。

3.衝突その後

両軍の衝突後、インド政府は、中国製品のボイコットへと舵を切ることになります。世界的に人気の動画アプリ「TikTok」や中国版のツイッター「微信(WeChat)」をはじめとした59種中国アプリを、インド政府は禁止しました。

さらに、中国から購入した、すべての電力設備の検査を徹底することや、ニューデリーにある約3000のホテルで、中国人客の受け入れ拒否の決定、チェンナイ港での中国貨物の通関手続きの停止などが、行われています。

政府のこうした方針とともに、インド国内では反中感情が盛り上がり、中国産の電化製品や車などが破壊される動画が、SNS上でたびたび投稿されています。

インド独立後、中印国境紛争を経て、多くのインド人は反中感情をもっていますが、今後どういった動きを見せるのか注目です。

インド側の反中が盛り上がる中、中国の反応は冷静です。中国政府の対応も、感情が先に走るようなことはなく、メディアの報道も至って冷静で、この両国間の衝突を知らない中国人が多いのではないか、というくらいのレベルです。これは、中国側が、自身の犠牲者の数を発表していないこともあり、これ以上の対立を煽るつもりがないようにもみえます。

ただ、現在、中国は様々な国々と同時進行的に、領土・領海問題で、事を荒立てています。インドに加え、南シナ海では東南アジア諸国と、尖閣沖では日本と、もめていますが、これらの国々には、アメリカが支援にまわっています。

さらに先日は、小国の一部領土も、突然、中国のものだと言いはじめ、世界を驚かせています。

4.2020年6月中印国境の衝突:中国軍による釘バット奇襲!?のまとめ

このニュースを初めてみた時、中国軍が、釘バットを武器に、奇襲でインド軍を襲い、20人を殺したという内容に驚かされました。今の時代に釘バットなのかと驚いたのですが、意外と釘バットは、アメリカをはじめ、様々な国でも、殺傷能力の高い武器として、用いられているとのことです。

また機会があれば、中印の紛争について、取り上げてみたいと思います。

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