インドの女性労働人口考

インドの女性労働人口考

インドの女性は、社会進出が遅れているといわれており、エンパワーメントが世界から求められています。

労働市場は、そうした女性の社会進出を測る指標として、よく用いられてます。

  • 日本の女性労働人口の割合は、全体の43.7%で、世界から遅れていると指摘されています。
  • インドの女性労働人口は、約35%(最新の2011年の国勢調査では、全労働人口は4.3億、男性は3.1億、女性は1.5億人)で、インド女性の社会進出は、日本よりも大きな課題となっていることが分かります。

今回は、インドの女性の労働人口が、少ない理由を考えます。

1.「家庭内」労働

一般的に、家庭内の女性の労働は、給与が発生しないため、非市場向けの経済活動といわれて、労働人口としてカウントされないことが多いです。

どういった仕事がそれに当たるのか、簡単にみていきます。

  • 魚や鳥の獲得・解体(調理)
  • 家畜の世話(牛糞の乾燥や掃除、餌やりなど)
  • 家庭菜園(果物・野菜)の手入れ
  • 水運び
  • 家庭用の裁縫
  • 子供の教育

こうした、生活を維持するために必要とされる仕事は、大部分が女性によって担われ、多くの時間を費やしてきたにもかかわらず、家事の延長としてみなされてきました。

例えば、近年、マディヤ・プラデーシュの農村部で行われた調査では、61世帯のほとんどの家で、燃料としての薪の採取は、女性が行い、半数が毎日、6割が4時間以上かけて、薪の採取を行っているということです。

その他の調査でも、農村部(酪農や農家など)の女性は、その労働時間は、毎日3~6時間を費やしている、との結果が出ています。こうした女性の労働は、貧困層の多い農村部では特に、日々の生活をかろうじて維持するために、必要とされる活動です。世帯収入も低いため、食材を買うというよりも、できるかぎり自分たちで調達する、という生活を営んでいるのです。

2.伝統的女性観

こうした実態調査は、国勢調査をはじめ、様々な機関により行われていますが、アンケートに答えるのは、家長の男性であることがほとんどです。

農村部の男性は、伝統的なインドの慣習を、盲目的に受け入れていることが多いため、女性を非労働者としてみる偏見・固定観念に縛られてしまいます。そのため、女性の多大な「助け」のもとに収入を得ても、女性の活動を「労働」とは認めずに、無償の家事の延長と認識するのです。

農家や酪農など、女性が長時間の労働をすることはよくありますが、収入・資産は、家長である男が握ります。これは、インドで伝統的に続いてきたことで、家長の男性の指示に従い、男性よりも、長時間の労働を強いられる女性もいます。

こうした女性は、家の中でも家事をしなくてはならないため、インドにおける女性の抑圧の例として、農村部の女性労働は、国際会議でもしばしば取り上げられます。

3.その他の女性の労働市場進出の阻害要因

インドでは伝統的に、男は外、女は家で、という古い家父長制の思想が、現在も強く残っています。

文化的に、男性は家を守るために家の外で働き、女性は家を守る、という思想があり、女性が家の外に出ることの、足かせとなってきました。

私が以前、ホームステイをしていたインド人の家では、奥さんが買い物に行くのも夫の許可が必要で、許可なく行くと叱責されていました。

私が一度、「買い物くらい、許してあげなよ」となだめたことがあったのですが、それに対して、夫は「何かあったらどうするんだ、インドは日本とは違うんだぞ」と本気で言っていました。

これは、家父長である男性が、家族を守るという、強い使命感ともいえるもので、本人たちは決して、偏見だの、女性抑圧だのとは、思っていないようでした。

女性も、それを当然と、受け入れているようにみえます。こうした文化的要因が、女性を家庭に閉じ込めてきたのでしょう。

また、現在のインド社会で、『マヌ法典』(ヒンドゥーの規範が編纂された、最高権威の聖典)の文言の影響を、直接は受けている人も少ないでしょうが、マヌ法典には、インド人女性への、抑圧・偏見の原型ともいえる記述が、多数あります。

  • 「女はこの世において、どのように注意深く監視されても、男に対する欲情と浮気心と生来の薄情さゆえに、夫に対して不貞をはたらく」
  • 「この世において、男を堕落させるのは、女の天性である。だから賢者は、女に対して心を許すことはない」

こうしたことが、インド文化に絶大な影響を与えたといわれている『マヌ法典』には書かれています。

女性の教育が、男性に比べ、全体的に劣っていることも要因となっています。その象徴的指標である識字率は、2011年の最新の国勢調査で、男性約82%、女性約65%と、その格差がみてとれます。

教育の水準が低いということは、女性の職業の選択の幅も、必然的に狭まります。そのため、伝統的な家庭内労働を強いられている女性が、いまだに多いのでしょう。

ただ、近年、女性の教育も進んできているといわれ、都市部のブランド店で働く女性も、以前に比べ、増えてきたように感じます。女性の大学進学率が、少しずつ増えてきているのも、影響しているのかもしれません。

10年後に、日本くらいの水準になるとは思えませんが、意識変革を期待したいです。

4.インドの女性労働人口考のまとめ

インドの女性問題は、個人的にも興味があるので、ニュースなどはこまめにチェックしているのですが、課題は多いようです。

伝統だから仕方がないと諦めるのではなく、何とか女性に政治力をもってもらい、活躍できる社会環境を作ってほしいものです。

また機会があれば、女性の労働問題について紹介したいと思います。

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