カースト制度内部の別側面:支配カースト

カースト制度内部の別側面:支配カースト

カースト制度・カーストコミュニティは、結婚・食事などにおいて、バラモンをヒエラルキーの最上位におく宗教的規範によって、相互に深く結びついてきました。ただ、宗教的規範だけでは、周辺コミュニティの間に起こる摩擦は解決できません。

そのために、一般的にクシャトリヤ(ヒエラルキーの2番目の層)、支配(ドミナント)カーストがいます。コミュニティ内外の摩擦を解決することが、主な仕事となるのでしょうか。

今回はカーストのもう一つの側面である、コミュニティを統治する支配カーストの特徴を紹介します。

1.カーストコミュニティ内部の地位

一般的にカーストコミュニティ(村落)は、10~30のカーストで構成されています。このコミュニティは経済的な結びつきと、バラモンを最上位、不可触民を最下位とする、宗教的、儀礼的上下関係で結びついています。

カーストコミュニティにおけるヒエラルキーは、地域ごとに政治・経済・社会的変化に応じて、多少の流動性がありました。社会的地位を向上させたいとする場合、所属するカーストのメンバー全員が結束して、新しい規範を取り入れるということが起きます。その規範は、宗教的に浄性の高いとされる菜食や、禁酒、寡婦の再婚の禁止など、さまざまな規範が採用されます。浄・不浄に基づくヒエラルキーには、複雑な宗教規範が絡み合っているのです。

一方で、経済的な側面からみるとどういうことがいえるのでしょうか。上位カーストのバラモンが、そのまま経済的にも力をもち、裕福となっているのでしょうか。もちろんそういうケースもありますが、一般的にはクシャトリヤが有力者となり、コミュニティ内部で一番力をもつケースが多いです。

この最もコミュニティ内で力をもつカーストのことを支配(ドミナント)カーストといいます。その力の源泉は、経済力と武力です。この際の注意点としては、かれらが宗教規範に関して、コミュニティ内で一番の浄性をもつわけではないということです。

そのため、支配カーストが儀式の運営を取り仕切ることがあっても、あくまでその儀式(サービス)をバラモンカーストから受ける立場になります。宗教的ヒエラルキーでは下に位置し、バラモンにサービスを施してもらうということです。

2.支配カースト

では支配カーストの特徴をみてみましょう。

コミュニティ内部の住居としては、立地的に良い土地に支配カーストが住みます。その他の場所に各カーストがそれぞれ固まって住み、不可触民はその村落の周辺に住んでいます。支配カーストは広い土地をもち、人数的にも一番多いケースが多いです。

支配カーストは、どういったことが優遇されるのでしょうか。

例えば髭剃りカーストや大工カーストなどの仕事を、優先して受けることができます。カーストコミュニティは、それぞれのカーストが相互補完的に必要とされる仕事を生業としています。そのため、その仕事を優先的に受ける権利は、経済的支配的な地位をもつカーストの特権として考えられています。

一般カーストのメンバーたちは、支配カーストへの仕事がないときに、それぞれが相互補完的に仕事をしあいます。

支配カーストの仕事は、カーストコミュニティを守ることなので、普段は特に何もしませんが、コミュニティ内外の争いが起こると、その問題解決に当たります。

3.各カーストコミュニティの関係

各村落は伝統的に完結しており、各サブカーストが固定的な職種として歯車となり、コミュニティ内部の経済をまわしています。

ただし基本的には1つのコミュニティの中で生活をするカーストがほとんどですが、中にはその職業的な特性から、村々を渡り歩くカーストもいました。 一つのカーストコミュニティ(村)の中に必要とされる職業(カースト)すべてがあるわけではなかったため、困った時には近隣のコミュニティとの間で、その職業の人間の行き来がありました。

都市部の商人が、売るものを仕入れる必要があるときもあります。コミュニティ内部の自給自足というイメージが強いかもしれませんが、実際には各村落同士も相互補完的に結びついていたといえます。

カースト間の相互補完関係は、都市部と村落では性格が異なりますが、インドの人口の大多数は村落であり、その中に典型的かつ伝統的な姿をみることができます。

4.カースト制度内部の別側面:支配カーストのまとめ

カーストコミュニティの構造は、浄・不浄の概念や各カーストの結びつき、ヒエラルキー、結婚制度、―教などが複雑に絡み合い、難しいと感じる人も多いと思います。ただ、1つずつの要因を理解していけば、カースト制度の全体像もだいぶ理解できるはずです。

今回紹介した支配カーストのように、浄・不浄の規範だけでない側面も、カースト制度にはあるということがわかります。コミュニティを「守る」ことが役割のかれらは、有事以外は他のカーストに支えられており、そういうことがカーストの相互補完関係の一つといえるのでしょう。有事の際はコミュニティのために命を懸けて戦うため、バラモンから違う意味合いでも尊敬を集めていました。

バラモンを頂点とする宗教的な規範が、コミュニティ内部を結び付け、文化的側面から守るのに対し、支配カーストは物理的に、コミュニティの独立を守っていたといえます。

今回紹介した支配カーストは、独立後に国、州、各自治体と統治体制が確立した現在のインドにおいても、地方の農村部では依然として有力カーストとして残っています。統治体制が根本から変わっても依然として力をもち続ける支配カーストから、カースト制度のインド社会に与え続ける影響力を鑑みて今回の記事を〆たいと思います。

参考文献

  • 山崎元一『インド社会と新仏教 アンベードカルの人と思想』刀水書房、1979年
  • 小谷汪之『不可触民カースト制度の歴史』明石書店、1996年
  • 小谷汪之『インドの不可触民 その歴史と現在』明石書店、1997年
  • 小谷汪之『穢れと規範 賤民差別の歴史的文脈』明石書店、1999年
  • M.B.ワング著、山口泰司著『ヒンドゥー教』青土社、1994年

カーストコミュニティ内部において、生活に困窮する下位カーストは生じることはありますが、有事の際は別ですが、支配カーストがお金に困る構造にはなっていないません。

下位カーストが困窮した場合は、周囲が施しあう文化があります。

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