デリー・ムンバイ間・産業大動脈構想

デリー・ムンバイ間・産業大動脈構想

デリー・ムンバイ間・産業大動脈構想(Delhi-Mumbai Industrial Corridor Project)のことを、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。私がこのプロジェクトを知ったのは、インドに来てからで、その規模の大きさに驚かされました。

このプロジェクトが完遂されると、デリー・ムンバイ間の物流が大幅に変わり、世界的にも注目される巨大工業地帯が出来ることになるんです。

今回は、このデリー・ムンバイ間・産業大動脈構想を紹介します。

1.デリー・ムンバイ間・産業大動脈構想とは

デリー・ムンバイ間・産業大動脈構想は、世界最大級の産業・インフラ開発プロジェクトといわれています。2006年12月に、日本側から提案され、日印両政府の間で、正式に調印されました。総額1000億ドルといわれるプロジェクトで、首都デリーと、インド最大の都市ムンバイ間、約1500kmを結ぶ、物流専用の貨物電車を繋ぎます。

そして、6つの州にまたがる沿線に、地域物流拠点や工業団地、IT拠点、スマートシティなど、ハイテク産業地帯を建設するということです。24の工業地帯、8つのスマートシティ、2つの国際空港、5つの電力インフラ設備、2つの高速輸送システム、2つの物流ハブの建設が、計画に含まれています。

デリー・ムンバイ間・産業大動脈構想の実現により、ニューデリー・ムンバイ間の貨物輸送時間は、14時間にまで短縮される予定です。このプロジェクトの、産業への効果としては、物流ハブを確立することで、ビジネスのスピードを上げ、土地取得などにリソースを割くことなく、迅速な工場設立を可能にします。

また、この物流網は、とも連動し、インド全体に、安価で高速、効率的な物流を提供します。

インド政府はあくまで、ファシリテーターとして関与し、環境づくりに尽力するということです。

慢性的な、高い失業率が課題となっているインドにとり、雇用対策としても、大きな効果が期待されています。主に製造業で、約300万人の新規の雇用が予想され、プロジェクト完成後、軌道に乗ればさらに、雇用は拡大し、生産能力も上げていくことが計画されています。

また、教育・研究機関も充実させ、人材育成にも力を入れていきます。

このプロジェクトのきっかけは、2008年の北京オリンピックだといいます。北京オリンピック開催準備のため、中国が大量の鉄鉱石を、インドから輸入したため、日本では、鉄鉱石の調達が十分にできなくなってくる可能性があり、その危険性を回避するために、打開策として、デリー・ムンバイ間・産業大動脈構想を考えたのでした。

鉄鉱石の、インド以外の国からの輸入は、物流・費用対効果の観点から困難で、インドからの供給を増やす必要があったのです。そこで、日本の「東京大阪間・太平洋ベルト地帯開発」に着想を得て、デリー・ムンバイ間・産業大動脈構想が、インドへ提案されました。

インド市場は、その巨大な人口と、購買意欲の旺盛な内需から、多くの国々にとって、有望な投資先となっています。デリー・ムンバイ間・産業大動脈構想が始まった当初の、在印日系企業は約600社でしたが、この計画の進展以降、多くの企業が、新たな投資先として、インドに注目をしているといいます(在印日系企業は2020年で約1500社)。

2.現状と課題と問題点

このプロジェクトは、4つのフェーズで構想されており、2020年7月現在は、第1フェーズの建設が行われています。第1フェーズは、産業拠点として、需要の高い地域から選ばれ、2013年からスタートし、当初の予定(第1フェーズは2020年あたりに完成)から遅れていますが、現在も建設は続いています(法整備、土地買収等が遅れ、計画も延び延びになり、コロナ禍でさらに遅れています)。

マハーラーシュトラ州のAurangabad Industrial City(AIC)のように、建設が終わった地域もあります。このAICは、工業団地であり、スマートシティとしても、先端技術が集約されていく予定です。スマートシティの都市計画などは、インド各地で進められており、日本もなんとか、しがみついてほしいものです。

貨物電車も、当初の計画では、他の工業団地建設に先駆け、2021年に完成予定でしたが、現在も目途はたっていません。

このプロジェクトが、期待に反して進まない理由は、6つの州にまたがるプロジェクトということが挙げられます。インドでは、各州ごとに、重点化する課題も異なるため、デリー・ムンバイ間・産業大動脈構想の取り組みが、遅れがちになっているといいます。

インド固有の、手続きの複雑さの問題も、あげられています。デリー・ムンバイ間・産業大動脈構想においては、農地から工業用地へと転用する手続きに、時間がかかりすぎ、工業団地建設に、着工できない問題があがっています。これも、中央政府と州政府の足並みが揃わないことが、余計に時間がかかる要因となっているようです。

さらに、住民の徹底した抵抗により、政府による土地の取得が遅れ、それに伴い、工事の着工が、大幅に遅れる地域などもありました。インドの地方では、コミュニティ意識がかなり強いので、徹底した抵抗運動が繰り広げられているシーンも、ニュースでみかけます。電車に飛び込んで死ぬ人も出るなど、酷いものでした。

3.デリー・ムンバイ間・産業大動脈構想のまとめ

デリー・ムンバイ間のプロジェクトの進展は、インドで暮らしている日本人にとって、大変興味深くみられるではないでしょうか。このプロジェクトが完遂されれば、インドにおける日本の影響力も、もう少し強くなるのかなと期待してしまいます。

インドとともに、日本の国力も再び上がることを祈って、今回の記事を〆たいと思います。


※第4フェーズは、当初の予定では、2040年代から50年代の完成と、漠然としたもので、最終的な完成は、目処が立っていないようです。

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