インド洋における集団安全保障:CSRS

インド洋における集団安全保障:CSRS

近年、インド洋では海賊やテロリストの往来があり、周辺国の安全保障上の問題として認識されています。インド洋を通る貿易船や漁船が海賊に襲われるといったこともしばしば起き、航行する船や地域の漁民の不安の種となっています。

また、2008年に起きたムンバイのテロも、インド洋からの密入国だといいます。

今回は、こうした問題に対処するため、インド洋周辺国の間で結ばれたCSRSという協定をみてみます。

中国の「一帯一路」もインド洋の安全保障の問題となっているようです。

1.CSRS(沿岸監視レーダーシステム)

2015年、セイシェル、モーリシャス、スリランカとインドは、CSRS(Coastal Surveillance Radar Systems、沿岸監視レーダーシステム)の協定を、インド主導のもと結びました。インド洋の監視の強化を通じて、インド洋を取り巻く国々の航海の自由や、協力と安全保障を高めること目的としています。この協定は、沿岸地域すべての人の安全と成長を持続可能とすることを目指し、各国が海上物流と情報網の改善、近代化を促進します。

モルディブへも参加を求めましたが当時のモレーン政権は中国への傾斜が著しく、参加は保留されました。

インド洋の安全保障に問題があると意識された例としては、2008年にムンバイで起きたテロが挙げられます。このテロリストは、テロの際にパキスタンのカラチから船を経由して、ムンバイに入ったとされています。

これ以降、インドは沿岸監視ネットワーク構築を迫られ、強化を目指していきます。

インド洋を周辺国で相互に分担、協力し、監視することは、海賊行為や、覚せい剤・人身売買、違法漁業、津波やサイクロンなどの自然災害による危機への対処など、国境を越えた安全保障の問題を軽減します。

インド洋は、産油国からの船が通る領域であり、、東アジア、ヨーロッパ、南北アメリカなどへ向かうため、この協定が世界経済へ果たす影響は大きくなっています。インド洋を取り巻く国々は、28か国、世界の人口の35%、世界のGDP19%、全世界の石油の65%以上、世界のガス埋蔵量の45%以上を占めており、海上貿易の80%がインド洋を通過しているということです。インドはインド洋を通じて国内消費の70%の石油を輸入しており、大部分は湾岸地域から輸入しています。

CSRSの強化は、こうした貿易の円滑化をもたします。

パートナー諸国での情報共有と安定した海事政策は、地域経済の安全・安定を維持するために、不可欠という共通認識となっています。

2.中国の一帯一路計画とインド洋周辺国

CSRSの動きは、中国一帯一路への警戒という側面も強くあります。

以前から中国は、スリランカへ莫大な融資をして、さまざまなインフラの整備を支援してきました。そうした流れでスリランカ南部に、ハンバントタ港を中国の融資で完成させたのです。

しかし、この融資は高金利であったため、中国に返済を迫られたスリランカは、借金返済の免除と引き換えに、港を中国へと引き渡すことになりました。この件は世界中で報道され、インド洋周辺国も、中国への警戒心をより一層強めたといいます。

インド洋周辺国のパキスタンにも中国の触手は伸びており、今後の動向にも注意が必要です。

こうした動きの中、CSRSにおいてインドはリーダーとしてまとめ役を担っています。

CSRSが締結された当初、モルディブは一帯一路において重要な港をもっているため、当時のモルディブ政権は中国の巨額融資に浮かれ、CSRSへの参加表明を留保するという立場をとっていました。しかし、その後モルディブは、前政権の中国マネーがらみの汚職や、スリランカの港が借金のカタで取り上げられたのを認識したこともあり、その後の選挙で中国と距離をとる政権が勝ち、CSRS協定に批准することになります。

インドからの貨物船の多くがモルディブの航路を通過するため、モルディブのCSRSへの加入の影響力は大きいといいます。モルディブのCSRS加入により、中国の影響力増加に一定の楔を打つことができたといえ、インド洋におけるCSRS参加国の地位を強化することにつながっています。

また、インドは海上安全保障のパートナーとして、オーストラリアの支援を受けています。これらの国々は、中国のインド洋や南シナ海での覇権を、海事、国家安全保障、地域の経済的利益の脅威とみなしています。特にオーストラリアにとり、インド洋は重要な貿易ルートであるため、インドとの関係を準同盟国として、安全保障の結びつきを強化しています。

3.インド洋における安全保障のまとめ

日本では、一帯一路の中国により、海洋支配や南シナ海の話題はよく出ますが、インド洋に関するものは、スリランカの港を借金のカタで取り上げたというくらいしか聞いたことがありませんでした。

しかし、当然当事者であり、現在進行形の脅威にさらされているインドは、対抗策を考えざるを得ない状況です。今回紹介したCSRSもその1つで、インドが主導的役割を果たしています。

モルディブに新たな港を整備する費用を、インドなどとともに日本も拠出し、中国の覇権に対抗すべく、動きがはじまっています。自由主義国の雄として、インドがインド洋の覇権を握ることを願って、今回の記事を〆たいと思います。

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