アーユル・ヴェーダで用いられる生薬とヒンドゥー文化

アーユル・ヴェーダで用いられる生薬とヒンドゥー文化

インドの医療で有名な生薬について、ご存じでしょうか。あまり聞いたことがない人もいるかもしれませんが、アーユル・ヴェーダなら聞いた人も多いと思います。このアーユル・ヴェーダで用いられる薬が生薬で、インドの医療として数千年来、受け継がれてきています。

今回はインド文化に根づいている生薬と、生薬を記しているインドの古典医学書についてみてみます。

1.インドの生薬

生薬(Crude Drugs)とは、天然由来の薬効をもつ植物などから、薬効の成分の抽出などせずに用いられる薬です。生薬の多くは植物由来ですが、動物鉱物に由来するものもあり、インドでも広く用いられています。古代のアーユル・ヴェーダ(インド伝統医療)の聖典『チャラカ・サンヒター』では、この世のすべてのものは、どんなものでも薬になると書いています。

アーユル・ヴェーダは古典の世界において、医療として確立していると考えられており、現在もこうした古典はテキストとして使われつづけています。古代聖典で医学書でもある、BC6~BC1世紀ころに編纂された『スシュルタ・サンヒーター』や、AD1~2世紀ころに編纂された『チャラカ・サンヒター』においても、飲食に関する項目があり、動物や植物の薬としての作用が記されています。

この2つの聖典には、インド人が飲食を薬として観察してきた歴史が記されており、植物の「薬」だけでも1,000種類以上の名前があるといいます。ただ、同じ植物でも、根、茎、樹皮、果実、種などの部位ごとに違う名前で書かれているため、実際には500種類程度と推測されます。現在のインドの生薬を扱う大きな店では、300~400種類ほどが置かれているようです。

インドの生薬は特定の食材を使ったものを調理して、食事として摂取することが多く、食材は1つでなく10種類以上を合わせて摂取します。生薬としての食材の調合や調整方法、煎じ方なども、インドの古典医学書において詳述されています。

ただ、インドの生薬の実践は、医学書などに従うというよりも、医学書を基にした現場の医者の経験から、調合や調整が優先される傾向にあるようです。また、インドは広大であるため、植物の分布は地域ごとに異なることが多く、例えば頭痛などにおいても、地域ごとに使われる植物は異なる場合があります。

そのため、各医学書において、目的のために用いられる「薬」の名前は同じだとしても、実際に使われる植物などは異なるといったケースが多々あり、文献研究のハードルを上げているといわれます。

11~12世紀ころにも、古典研究の困難さが指摘されていたようで、生薬を整理するためのニガントゥ(nighantu)と呼ばれる辞典が作られています。この辞書が作られたころ、南インドで鉱物を薬として用いる「シッダ(siddha)」という用法が成立し、水銀など、多くの鉱物も生薬として使用され始めます。

次の項からは、インドの古典医学書について簡単に紹介していきます。

2.スシュルタ・サンヒーター

スシュルタ・サンヒーターは、サンスクリット語で記された薬や手術に関する医学書で、インドの伝統医療アーユル・ヴェーダのテキストの1つとして知られています。

このスシュルタ・サンヒーターは、編纂された時代は諸説あり不明確ですが、BC6世紀ころ、またはBC1世紀半ばころなどに書かれた可能性が高いと考えられており、古来からの医学知識の蓄積をみることができます。

ヒンドゥー文化のもとに書かれた医学書であり、神々やヴェーダをはじめとする、古代聖典への言及も多々見ることができます。カルマ(業)やアートマン(自己)への言及もあり、哲学としての要素もみえるため、大変難読となっています。

健康のための運動やウォーキングなどとともに、ヴェーダなどで描かれている神々の生活と医療を結びつけ、実践しています。ここで記されている伝統医療の実践が、インドで脈々と根づき、治療や健康法としての生薬も広く伝わりました。

3.チャラカ・サンヒーター

チャラカ・サンヒーターは、スシュルタ・サンヒーターと並び、アーユル・ヴェーダのテキストとして広く知られています。AD1~2世紀ころに成立したと考えられていますが、11世紀ころまで記述がつけ加えられており、インド伝統医療の歴史をみることができます。

2世紀ころ、当時支配者であったカニシカ王の侍医であったチャラカの名を冠したこの医学書は、インド伝統医療が神々から伝えられたとしています。さまざまな症状の対処療法が「神の教え」という形で描かれています。ただしこれは、侍医であったチャラカが中心となって作ったものではなく、北西インドの都市、タキシラを中心に発展したアートレーヤ学派の医学をまとめたものになっています。

このテキストの教えは、体風(バータ)、胆汁(ピッタ)、粘液(カパ)の3つのバランスを保つことが基本とされ、内科的治療の重要性を記しています。こうした内科的治療に、生薬は用いられています。

医者の道徳や倫理についても定められており、インド伝統医療のみならず、インド哲学の世界でも重要な文献として考えられています。

4.インドの生薬と文化のまとめ

インドでは生薬を使用した化粧品も多く、私も日本へのお土産として何度も買ったことがあります。全体的にアレルギー成分はなく、アトピーなど肌の弱い人でも使えるということで、〇〇を買ってきてとよく注文されました。

この他にも生薬を用いた療養施設が、ガンジス川で有名なリシケシュなどにあり、長期にわたる療養を目当てに世界各地から人が訪れています。

有名なアーユル・ヴェーダのマッサージで使われるアロマオイルにも生薬が用いられており、インド人にとりエステというよりも療養の側面が強いです。〇〇の治療で1~2週間通うコースなど、さまざまがあります。このマッサージは大変気持ちがよいので、リラクゼーション目的でもおすすめします。

このように、インドに生薬の文化は深く根づいています。水銀を摂取するなど、ちょっと怖いものもありますが、まだ未経験の方がいれば下調べをしたうえで体験してみると、新たなインド文化の一面をみれるのではないでしょうか。

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