命がけの非暴力森林保護:チプコ運動

命がけの非暴力森林保護:チプコ運動

チプコ運動(Chipko Movement)という、森林保護の運動を聞いたことがあるでしょうか?この運動の特徴は、政府と大企業による森林伐採に、主に女性が、非暴力で抵抗するものでした。

19ウッタラカンド州で始まったこの運動は、女性が木にしがみつき、伐採を止めようと、非暴力で抵抗をした象徴的な写真によって、世界中で注目を集めたといいます。

今回は、このチプコ運動を紹介します。解説動画もあったので、載せておきます。

1.チプコ運動はどんな背景から生まれたの?

チプコは「木を抱きしめる」という意味で、チプコ運動は、ウッタラカンド州の、ヒマラヤ山脈の森林伐採で生じた問題から起きました。この伐採は、産業化・平地化のため、政府主導で行われたものです。

この伐採が進められた周辺の丘陵地帯には、村々があり、従来、人々は、この伐採された地域をもとに、伐採業、果樹などの栽培業などで生計を立てていましたが、こうした生業は、ほぼすべて壊滅したといいます。

さらに伐採、平地化された山々から、農地へ水を引いていたため、環境の変化により、農業も継続不能となりました。

また、日々の生活に必要な薪や、家畜の肥料の調達源も、失われました。

村の男性の仕事は奪われ、都市部への出稼ぎをしなくてはならないまでに追い込まれたのです。

家に残された女性たちは、夫のいない家の中で、生活のやりくりをし、従来は家の周辺で行えていた薪拾いなどの仕事も、山の奥地まで行かざるを得なくなり、仕事の負担が増えることになりました。

また、この森林伐採は、丘陵の保水能力の低下を招き、平地部の洪水を引き起こしています。

さらに、干ばつも起きてしまったため、人々は精神的・経済的に追い込まれていました。

この環境被害を生んだ森林伐採は、産業化の進展に伴う、需要の増加によって、ますます進められ、これを止めるべく、チプコ運動がスタートします。

2.チプコ運動の展開

チプコ運動が展開するきっかけとなったのが、ガンディー主義のサルボダヤ運動家たちの活動です。サルボダヤ運動は、世界を、飢餓や貧困、無知などから救おうという、アジア最大級のNGO団体による活動です。

サルボダヤ運動家は、この森林伐採の被害に遭った地域を訪れ、人々に木々の価値を教え、伐採への抗議は、非暴力の姿勢で行うように教化しました。

そして、運動を継続的に展開するために、ヒンドゥーの宗教的伝統を取り入れ、チプコ運動はスタートします。ヒンドゥーの伝統を取り入れることで、人々が受け入れやすく、連帯感を得やすくしようとしたのです。

チプコ運動家たちは、サルボダヤ運動家の助けを得て「インドの天然資源の保全、回復、生態系に影響のない、健全な利用」を広めるために、宗教的巡礼を模し、森林伐採の被害を受けた村々を周り、「木の価値」を教化していきました。

この「木の価値」は、ヒンドゥーの古代聖典『リグ・ヴェーダ』に由来するもので、その知識は、多くの人々の共感を呼びました。

その他にも、木を命がけの非暴力・不服従的行動で守って死んだ英雄の話など、教化のために、様々なテキストを用いたといいます。

3.世界で注目を集めたチプコ運動の抗議行動

1974年3月25日、この日行われた抗議行動は、世界で注目を集めます。

この日は、大規模な森林伐採が、政府の雇った伐採業者によって、行われる予定の日でした。

森林保全のために、これを止めようと、チプコ運動家の女性たちは、抗議に向かい、説得を試みましたが、失敗します。抗議に怒った伐採業者たちは、銃や斧などで女性たちを脅し、立ち去るように求めました。女性たちは、これに屈せず、木にしがみつき、伐採業者が諦めるまで、抵抗をし続けたのです。

この時、彼女たちは「木を切るなら私ごと切りなさい!」と叫んだといい、この抵抗は、夜が明けても続きました。

女性たちの、この抗議の行動は、すぐに近隣の村々に広まり、翌日にはさらに多くの女性たちが参加し、森林の伐採を防ぐこととなります。

この時の女性たちの行動は、非暴力・不服従の抵抗であったため、「ガンディー主義」と呼ばれ、報道されることとなります。

彼女たちの勇気のある行動は、多くのインド人の共感を呼び、世論は彼女たちの味方となり、当時首相であったは、森林伐採に伴う開発の中止を決定ました。

その後、伐採された森林の再生計画が実施され、収穫が期待できる果樹や、薪、飼葉(かいば)となる木などが、植樹されています。

この時の彼女たちの命がけの抵抗は、世界中で報道され、注目を集めました。

4.命がけの非暴力森林保護:チプコ運動のまとめ

今回紹介したチプコ運動のエピソードは、映画化もされており、インド人にも馴染みのあるエピソードとなっています。

インド人は、まだまだ環境問題には鈍感なように見えますが、こうした問題意識が広まり、インドの環境問題が軽減されることを祈って、今回の記事を〆たいと思います。

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