幼児婚:インドの代表的悪習の歴史と現在

幼児婚:インドの代表的悪習の歴史と現在

インドの代表的な悪習、幼児婚の問題はご存知でしょうか?世界で一番、幼児婚が行われている国は、インドなんです。

法律では厳に禁止されているのに、なぜなくならないのか。今回は、インドで幼児婚が広まった歴史的背景から、現在の幼児婚に至るまで、追っていきます。

1.『マヌ法典』と幼児婚

ヒンドゥーの最高権威といわれている『マヌ法典』には、女の子供を結婚させる父親の義務が、次のように書かれています。

「家柄が良く、姿形が整っていて、同じ階級に属する求婚者には、娘が適齢期に達していなくても、規定に従って与えなくてはならない」(第9章88、『マヌの法典』田辺繁子訳、岩波文庫、1953年参照)

ヒンドゥーのルールさえ守っていれば、例えどんなに幼くとも、娘を結婚させなくてはならない、ということのようです。こうした『マヌ法典』の記述により、娘が結婚をせずに家に居続けることは一族の恥と考えられ、父親がヒンドゥーの規範を犯していることになります。

そのため、娘が産まれてしまうと、すぐに、結婚相手を想定して準備する必要が出てしまい、それが幼児婚拡散に繋がったということです。

2.幼児婚が流行った社会環境

娘の結婚相手は、同じカーストか、上位カーストのみ、とヒンドゥーの規範で定められています。

ヒンドゥー社会は、ヒエラルキー(ピラミッド型)の身分構造となっているため、上位カーストになるほど、男性が女性の結婚相手を探すことが困難であったといいます。それは、コミュニティ内が近親者にあたることが多く、近隣コミュニティにまで、血縁が広がっていることがあったためです。

そのため、上位カーストの男性は、相手が例えどんなに若くても、条件(もちろん同じカーストであれば誰でもいいということはない)に見合う女性(幼児でも)を見つけたら、結婚をする傾向にあったということです。これが、ヒンドゥーの内部から、幼児婚が流行った要因です。

外部要因としては、イスラム勢力の侵入があげられています。イスラムは多婚制を認めているため、支配者であるムスリムが、ヒンドゥーの女性たちを次々と娶(めと)ってしまったため、それを防ぐために、幼児婚がさらに促進されたということです。結婚してしまえば、ヒンドゥー同様、処女性を重要視するムスリムに、妻を取られることがなかったためです。このイスラム侵入以降、初潮前の女児の結婚という風習が広まった、という説です。

極端な話では、まだ赤ん坊がお腹の中にいるときに、結婚式を挙げたというものもあるようです。もちろん、出産前に性別がわかることはありませんでしたが、「念のために」ということなのでしょう。

例え男児が産まれても、それはそれでめでたいことだからと、よしと済ませました。現代の感覚からは、滅茶苦茶です。

3.イギリス植民地政府がみた幼児婚と以降の法規制

イギリス植民地時代の政府が、この幼児婚の慣習をみて、絶句したといいます。日本でいう幼稚園児程度の女児と、50過ぎの男が性交をし、それが原因で死ぬケースが多々あったためです。

また、初潮を迎えたばかりの女児の妊娠も多くあり、出産できずに死ぬケースも多かったようです。

こうした状況を見かねたイギリス政府は、幼児婚を規制すべく、法律を作ります。以下、イギリス政府介入・インド独立以降の、幼児婚規制に関する法を紹介します。

①1860年 インド刑法

10歳以下の花嫁との性行為は強姦行為とする

②1891年 承諾年齢法

少女が12歳未満の場合の性行為を禁止する

③1925年 承諾年齢法改正

少女の年齢が13歳未満に引き上げられる

④1929年 幼児婚禁止法

結婚できる年齢を男性18歳、女性14歳とする

⑤1949年 幼児婚禁止法改正

女性の結婚年齢が15歳からに引き上げられる

⑥1978年 幼児婚禁止法改正

結婚できる年齢が男性21歳、女性18歳へと改訂される

⑦200 幼児婚禁止法改正

法による規制を守らなかった親族に罰則を設ける

4.現在の幼児婚

現在のインドにおける幼児婚は、どういった状況なのでしょうか。残念ながら、幼児婚が確認されている数は、インドが世界で最も多く、全世界の幼児婚の3分の1がインドです

法律上は違憲となっていますが、現在も続けている地域があることが、確認されています。これは、法的な入籍はしなくても、実質的な結婚をしているという形です。特に、貧困層の多い地方の、農村部や山間部などで、確認されることが多いようです。

例えば、2012年に、幼児婚に対する調査が書かれているUNFPA報告書では、インドで最も貧しい州の1つといわれているビハール州において、女性の約69%が、幼児婚を行っていたとされます。こうした地域は、近代教育を受けている人が比較的少なく、昔ながらのヒンドゥーの伝統的慣習が、濃く残っていることが多いためです。

また、女性も重要な労働力と考えられているため、早いうちに、働き手の一人として確保したいとの思いから、幼児婚がなくならないとの要因もあるようです。

ありていの言葉になってしまいますが、教育や貧困問題の解消なくして、こうした問題はなくならないということなのでしょうか。

5.幼児婚:インドの代表的な悪習の歴史と現在のまとめ

みてきたように、インドの幼児婚は、宗教的な背景に基づき、広まったと考えられています。そして現在も、農村部などで広く行われている理由は、教化の非徹底と、貧困問題ということです。

インドでは、児童労働も法律で禁止されていますが、法的な拘束力はまだまだ、及んでいません。近い将来、インドの経済力が日本を抜くので、その頃にはこうした問題が改善されていることを願い、今回の記事を〆たいと思います。

BlogMuraFC2BlogRanking

VISITORS HERE:15,903, HOLI GREEN TOTAL VIEWS : 3,508,130

Previous(down)/ Next(up)
社会主義的政策を志向する政府による、厳しい規制が多くあったため、自由な事業展開が望める状況にはありま…
こうした罪はバラモンの規範に基づいたもので、罪の及ぶ範囲の広さがみてとれます。