インドの政権政党BJPの躍進のきっかけと政策の特徴:ヒンドゥー至上主義の影響

インドの政権政党BJPの躍進のきっかけと政策の特徴:ヒンドゥー至上主義の影響

インド最大の国政政党の1つ、現政権与党のBJP(インド人民党)の特徴としてよく上げられるのが「ヒンドゥー・ナショナリズム」や「ヒンドゥー至上主義」といった言葉です。何か怖さを感じてしまうこうした言葉ですが、日本にはこのBJPの特徴など全然伝わっていないと思います。

今回はこのBJPの躍進のきっかけと、その政策の特徴を中心に紹介します。

1.BJPのはじまり

宗教・文化的ナショナリスト政党の特徴を持つBJPの前身組織のインド大衆連盟は、RSS(民族義勇団、Rashtriya Swayamsevak Sangh)の政治政党として1951年に結党されました。RSSは排他性と攻撃性が顕著な宗教・文化共同体主義(コミュナリズム)、ヒンドゥ―至上主義に基づいた民族主義を掲げています。

RSSやBJPの掲げるヒンドゥー至上主義は、特定の土地と特定の寺院や宗派などの排他的な結びつきを強調する、民族主義や実利主義が顕著にみられます。このRSSがBJPの最大の支持母体であり、最強の圧力団体となっています。

そのためBJPは、ヒンドゥー至上主義に強く影響を受けた幹部を中心に運営されており、イデオロギー政党としての特色を強く持っています。

2.BJP躍進のきっかけ:アヨーディヤー問題

1980年代半ば以降、インド北部ウッタル・プラデーシュ州のアヨーディヤーの地をめぐり、ヒンドゥーとムスリムの対立が激化し、その波紋はインド各地へ拡がっていくことになりました。このアヨーディヤーの地をめぐる対立をアヨーディヤー問題といいます。この宗教対立を背景に、BJPは支持を広げていくことになります。

ムスリムにとってアヨーディヤーは、ムガル帝国の名将が建立したモスクがある神聖な場所であり、ヒンドゥー教徒にとっては、聖典である『ラーマーヤナ』のラーマ神の化身とされる主人公の生誕の場所で、互いに聖地として認識されていました。

しかし、記録によると1850年頃からヒンドゥー側は、このモスクがラーマ神の寺院を潰して建てられたものだという主張をはじめ、1912年,1913年,1934年と大規模な衝突が起きています。そして1947年のインド独立を機に、この衝突は顕著となっていきます。

こうした衝突が起きる中、モスクの中にラーマ神が顕現したという噂が広まり、アヨーディヤー内外から多数のヒンドゥー教徒が寺院に押しかけることになりました。行政がこの動きを抑えようとしたため、以降、ヒンドゥー側はラーマ神を拝むためにモスクを解放しろ、という要求を行っていくことになります。

こうした動きの中、勢力を強めてきたRSSなどのヒンドゥー至上主義者によってますます激しい運動が展開され、1986年に行政はヒンドゥー教徒にモスクを解放することになりました。しかし、ヒンドゥー至上主義者たちはこれだけでは満足せず、モスクの破壊とラーマ神の寺院再建をさらに激しく求めて行くことになります。

BJPの政策課題としても、このラーマ神の寺院の建立が掲げられています。

そして1992年、数千人のヒンドゥー至上主義者たちがモスクを襲撃し、破壊してしまいました。この事件は、ヒンドゥー・ムスリムの対立を著しく激化させるきっかけとなり、対立は拡散し、インド国内様々な地域で衝突が起こりました。

この衝突でヒンドゥー教徒としてのナショナリズムは高まることとなり、BJPの勢力を伸ばすきっかけとなりました。

3.国民会議派体制の崩壊とBJP支持層

1990年代半ばから、長らく政権を握っていた国民会議派は、腐敗などが告発され、その議席を減らしていくことになります。こうした中、ヒンドゥー社会に根差した選挙運動を展開していたBJPは、議席を飛躍的に伸ばしていくことになりました。

このBJPの支持層は、宗教的にはインドの約80%を占めるヒンドゥー教、地理的にはヒンディー語圏の北部と西部、社会経済的には上中位カースト、中小企業経営者、商店主、管理職、都市部住人、高学歴者、男性によって強く支持される傾向があります。

こうした支持基盤の外側でも支持を得るため、草の根の選挙活動によって一定の成果を上げています。しかし、多様なインド社会を反映するには至っていません。

4.BJPの主張:ヒンドゥー民族の団結

ヒンドゥー民族の一致団結・権利強化を通じてのみインド国民国家は強く偉大になる、というのがBJPの主張です。BJPのいうヒンドゥーには、シク教徒、ジャイナ教徒、仏教不可触民、部族民が一律に含まれますが、ムスリムやキリスト教徒は入っていません。イスラム教、キリスト教を除くインド由来の宗教、民族を一律でヒンドゥーと定義しているようです。

ムスリムやキリスト教徒に対して表立って敵対行為はとりませんが、敵視する団体を支援していることが明らかになっています。

5.BJPの政策

BJPの掲げる政策には、アヨーディヤー問題のラーマ神の寺院建立、ムスリム家族法の抜本的な改革、カシミール州の特権廃止など、対立を生むであろう政策があります。また、女性問題は、女性の権利拡大を政策として掲げていますが、イデオロギー上は強い父権主義の傾向をもっているため、抜本的な改革は容易ではないでしょう。

国防、治安政策では、1998年のパキスタンとの対立から行われた核実験のように、対決主義的性格を持つといわれていますが、その事後処理を見ても対処可能な現実的な動きをとる一面もあります。

部族問題、カースト問題などの国民統合に関わる問題では、強権発動をちらつかせ、制御可能な範囲内で政治的文献と社会・文化的同化を進めることで「1つのヒンドゥー」を目指し、支持団体の反発を受けない範囲で、地位向上のための教育・開発を進めています。

経済政策では国産品愛用を支持する一方で、グローバル資本主義へのインド経済の合流を目指しており、ムンバイに本社を置くリライアンスがその代表的企業といえます。

労働問題、土地問題では、保守的な考えを持っており、ヒンドゥ―としての文化を重要視しているため、問題は問題として置かれたままのことが多い傾向にあります。

6.ヒンドゥー至上主義とBJP

ヒンドゥー至上主義に象徴されるBJPの政策は、しばしばインド国内外で強い批判にさらされています。しかし近年、ヒンドゥー色に固執した政策は表向き影をひそめる傾向にあります。

これは、BJPの連立政権時代に政策調整や妥協を行ってきた経験が活かされているようです。その過程で強い支持層の外側の人々の反発を抑え、理解を得ることを実践してきました。

ただ、98年に政権を握って以降、特に教育やメディアの分野でヒンドゥー・ナショナリズムの宣伝に力を入れており、BJPによる民族主義の実現という目的は、静かに浸透していっています。BJPは穏健化したと評されることもありますが、政治的状況次第で政策を巧みに使い分けていると考えられます。

7.インドの政権政党BJPの躍進のきっかけと政策の特徴:ヒンドゥー至上主義の影響のまとめ

BJP政権以降、教科書は書き換えられ、歴史修正主義との批判も上がっています。ただ、近年のインド経済の急速な上昇や、安全保障政策は国民の支持を広く受け、2019年の総選挙でBJPは300を超える議席を獲得しました。

インドではヒンドゥー教徒が圧倒的なマジョリティとして存在しています。そのため、ヒンドゥー至上主義が影響力をもつのも当然なのかもしれません。

インドにいる日本人として、マイノリティとしてインド政治を見てみると、また違った見方ができ、インドの政治ニュースも興味深く見れるのではないでしょうか。

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