伝統舞踊:バラタ・ナーティヤムと踊り手の哀しい歴史

伝統舞踊:バラタ・ナーティヤムと踊り手の哀しい歴史

バラタ・ナーティヤム(bharata natyam)という、インドの伝統舞踊をご存知でしょうか。ヒンドゥスターニーの舞踊とは異なり、滑らかな優しい動きが特徴の舞踊です。

今回は、インドで人気の伝統舞踊、バラタ・ナーティヤムこの舞踊の踊り子の、哀しい歴史についてみていきます。

1.バラタ・ナーティヤムってどんな舞踊?

バラタ・ナーティヤムは、インドの代表的な舞踊の1つです。歴史的には、女性の踊り手が、一人で様々な役柄を演じる形式の舞踊のことを指してきましたが、現在は、複数人で踊るパートや、男性の踊り手も現れてます。

南インドの宗教、主にシヴァ派、ヴィシュヌ派、シャクティ派(シヴァ派から派生した宗派)の宗教的テーマや精神性を、舞踊を用いて表現してきましたが、今では、非宗教的なテーマも取り入れられています。現在は、・ナードゥ―州南東部、特にマドラス市を中心に、上演されています。

バラタ・ナーティヤムは、ヌリッタ(nrtta)とアビナヤ(abinaya)の2つの要素から成り立っています。

  • ヌリッタは、アダブー(adavu)と呼ばれる、基本単位となる動作、大地を踏みしめ、リズムを刻む足運びの連続(純粋舞踊)で構成されます。
  • 一方、アビナヤは、歌詞の単語ひとつひとつを、手・指で、ハスタ(hasta)と呼ばれる型を表現し、特に顔の表現・表情が大事にされています。

バラタ・ナーティヤムの舞踊は、ヌリッタだけのもの、アビナヤだけのもの、これらが交互に現れるものなどがあります。

歴史的には、この舞踊は、一人の女性踊り手に担われてきましたが、現在は、ヌリッティア(nritya)と呼ばれるソロパートと、ナティヤ(natya)と呼ばれるグループパートも、構成の中で登場します。

従来、この伝統舞踊は、寺院内の神に捧げる奉納舞踊として、寺院の外にでることはありませんでした。そして、植民地支配期以降、様々な問題から、一時期は完全に廃れることとなりました。しかし、インド独立期に盛り上がったヒンドゥー復古主義の中で注目を集め、この舞踊は寺院の外へと解放され、拡大して行きます。

2.バラタ・ナーティヤムの踊り子:デーヴァダーシー

バラタ・ナーティヤムの踊り手は、歴史的にデーヴァダーシー(devadas:神のめしつかい)といい、幼いころに神社に「奉納」された女性によって担われてきました。この「奉納」により、女性は神と結婚したことになり、神は死なないため、ヒンドゥーで嫌われているになることのない、神性を帯びた存在とみなされます。

この「奉納」される女性は、伝統的に、初潮前の美しい女児に限られており、寺院に女児を納めることは、一族にとり大変名誉なことで、社会的地位の上昇を得るといいます。この慣習は、中世以降の南インドを中心にみられ、デーヴァダーシーは、神と俗を繋ぐ貴重な架け橋として、尊敬と富を集め、パトロンの支援を受けていました。

こうした社会・経済的に恵まれた環境は、イギリスの植民地期に入り、一変します。デーヴァダーシーを支援していた有力者たちの、富と権力が失われたため、彼女たちは自力で稼ぎ、生活を営む必要が出てしまったのです。

寺院の中での生活しか知らない彼女たちは、生活の糧がなく、多くが売春婦となり、宗教的ステータスも失われてしまいました。もはや、神への神聖な舞踊を捧げる踊り子のイメージはなくなり、バラタ・ナーティヤムという舞踊は、人々の支持を得られなくなりました。

しかし、20世紀初頭、独立に向けたうねりの中、ヒンドゥー復古主義的な思想の台頭とともに、このバラタ・ナーティヤムの価値が見直されることとなります。バラタ・ナーティヤムは、寺院から離れ、舞台芸術として再生し、一般の人々がこの舞踊に触れ、学び、楽しむようになりました。

近年、男性の踊り子も、少数ですが登場しており、過去の暗いイメージを知らない層も増えてきて、インド各地や世界で上演を行っています。

3.伝統舞踊:バラタ・ナーティヤムと踊り手の哀しい歴史のまとめ

以前のバラタ・ナーティヤムは、宗教的テーマのみの舞踊でしたが、現在は、非宗教的なテーマをもとに、バラタ・ナーティヤムの形式をもって表現するものが、人気となっています。

知名度でいえば、この舞踊の名前より、デーヴァダーシーという問題の方が、世界的にはるかに有名です。この問題は、人権や親の養育権の放棄など、様々な視点でみることができます。

また機会があれば、デーヴァダーシーに絞り、もう少し突っ込んだ話をみていきたいと思います。

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