インドの鬼神:アスラ(阿修羅)

インドの鬼神:アスラ(阿修羅)

ヒンドゥーの神話にたびたび登場するアスラをご存じでしょうか。日本には阿修羅として伝わっているので、それを聞いたことがある人は多いと思います。一見、マイナーな神様かと思うかもしれませんが、古代ヒンドゥー神話の中に頻繁に登場する、大変ポピュラーな神様なんです。

今回は、このアスラがヒンドゥーの神話の中でどのように描かれ、変遷してきたのかをみていきます。

1.アスラ

アスラ(Asura)はインド神話における鬼神の1つで、闘争を象徴します。漢訳の仏典では阿修羅とされており、ご存じの方も多いと思います。アーリヤ人に伝えられた神話で、インドやイランで広く知られる神です。古代、アスラはデーヴァ(Deva)とともに、神々の属性を意味する言葉として使われていました。

アスラの〇〇神は悪の神、デーヴァの△△神は善の神ということではなく、ほぼ同意として神々をあらわしていたようです。しかしその後、時代の移ろいとともに、インドではアスラが悪神を、デーヴァが善神を意味するようになります。インドでは「a」が否定辞とみなされ、他の否定の言葉同様の語源解釈を行い、アスラは徐々に悪神とされることになったといいます。

古代ヒンドゥー聖典におけるアスラとデーヴァの闘争は、インド文学では有名なテーマとなっています。イランでAD3-7世紀ころに広く信仰されていたゾロアスター教で、主神であるアフラ・マズダはアスラに由来しているといわれています。においてアスラは、太陽や月を遮って、食を起こすといわれます。六道説では三善道、天・人・阿修羅に入れられ、五趣説では餓鬼・畜生に入れられることが多く、海底や地下に住むといわれています。

2.ヴェーダ神話の中のアスラ

ヴェーダは、リグ・ヴェーダ、サ―マ・ヴェーダ、ヤジュル・ヴェーダ、アタルヴァ・ヴェーダの4種があります。今回紹介する『リグ・ヴェーダ』は、アスラに関する神話をはじめ、多くの神々の物語が書かれていることでも有名です。これはBC1500~BC900ころに作られたもので、アーリヤ人の自然神崇拝を中心に書かれた文献です。

「リグ」は賛歌を意味します。『リグ・ヴェーダ』はインド最古の文献として、古代インドの宗教を知るうえで最重要と考えられています。『リグ・ヴェーダ』に数世紀にわたりさまざまな神話が書かれているため、同じ神もたびたび登場しますが、神話ごとに性質が異なり、一貫性はありません

今回紹介するアスラについても、同様のことがいえます。アスラは、もともとインドの古代聖典の中で、善悪の性質を併せ持つ、強力な超人的半神として記されていました。

  • 善なるアスラはアディアと呼ばれ、ヴァルナ(ヒンドゥーの神)に導かれます。
  • 悪なるアスラはダナヴァと呼ばれ、ヴィトラ(ヒンドゥーの悪神)に導かれます。

初期のヴェーダ聖典では、アグニなどさまざまな神を、それぞれの領域・知識・能力の「」という意味でアスラと呼んでいます。その後のヴェーダ文献では、慈悲深い神々群をデーヴァ、邪悪な神々群をアスラと呼ぶようになり、アスラはデーヴァと衝突を繰り返す「神の敵」として描かれています。前述したように「a」が否定辞とインドでは考えられているため、それが影響したようです。

ヴェーダ初期において、デーヴァはアスラと同様の神として描かれていました。しかし、もともとはアスラとして描かれていたインドラのように、 次第に善なる神々はデーヴァの中に吸収されていくことになります。善性をデーヴァが集約するようになり、アスラはその逆の悪神的存在と考えられるようになりました。デーヴァが住む世界はデーヴァローカ(Devaloka)と呼び、天、天界、天上界などと訳されます。

ヴェーダ神話における代表的な神はインドラ神で、日本では雷神としても知られています。ヴェーダ初期において、インドラはアスラのグループに入っていましたが、アスラが悪神的存在になるにつれ、デーヴァのグループとして描かれるようになります

  • 『リグ・ヴェーダ』の約4分の1がインドラの神話で構成されており、インドラが暴風神マルト神群を率いて、アーリヤ人の敵を征服する物語が描かれています。インドラは『リグ・ヴェーダ』において最大の神、神々の王として描かれていますが、時代が経つにつれその地位は下がり、現在では東方を守護する神との認識が広まっています。
  • デーヴァと対するアスラは、倫理と宇宙の法を司る神々として描かれ、その卓越した能力をもって、人々に時には施しをし、時には罰を与えるものとして、恐れられていました。初期ヴェーダにおいては、悪神として描かれることは少なかったようですが、アスラが次第に悪の性質を与えられ、デーヴァ信仰が隆盛となると、アスラを中心とした神話の数が減っていきます。

そして、ヴァルナやインドラといった神々がアスラからデーヴァに分類されるようになり、『リグ・ヴェーダ』の末期とされる時代の神話では、神々と敵対する悪神として、アスラは描かれるようになりました。

3.インドの鬼神:アスラ(阿修羅)のまとめ

今は一般的に悪神としてみなされるアスラですが、もとは神として、デーヴァ同様の扱いだったというのは少し気の毒に思ってしまいます。ゾロアスター教においては最高神アフラ・マズダになったという話もあるくらいなので、その落差のすごいこと。

インドで悪神扱いされた理由が、インドで「a」が否定辞だからという宗教的理由とは違う点だったのも面白く感じます。まだまだ日本に馴染みのある神様はインドにいるので、また紹介させていただきます。

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